容姿・経歴・その他メモ

カラフルに染めた髪、茶色に焼けた肌、目元を強調した化粧。獅子神百合は一見、よくいるギャル系女子高生だ。だが皮膚一枚のこと。塗り重ねたメイクの下には全く違う生き物が潜む。

百合の生まれた一族はいわゆる憑き物筋。優秀な実業家や傑物を多く排出すると同時に、それと同じくらい発狂者や失踪者を生み出す家だった。母、桜を含む家族のほとんどはある日「御山に呼ばれて」姿を消した。百合自身もまた小学生のとき、同級生の乳歯を全部折って自分の中のケダモノを自覚した。

「見せてはならぬ、知られてはならぬ。隠し通さねばならぬ」。それは彼女を育てた祖母が繰り返し言った言葉。百合もその言付けを守り、自分も偽り続けた。だが縛れば縛るほどに獣は獰猛さを増すばかり。 同級生を付け回すストーカー、子供に脱法ドラッグを売りつけるゲス野郎。鉄パイプとハンマーを手に夜な夜な徘徊し、そいつらを血祭りに上げていった。正義感に駆られたわけじゃない。ただ血が見たかった。

そして転機が訪れた。いつものように襲いかかった半グレ集団にオーヴァードが混じっていたのだ。久しぶりの生命の危機、蘇る過去のトラウマ。底なしの赫怒に少女の中のケダモノがついに檻を破った。

目の前の全ての敵を引き裂いても、破壊衝動は収まらず、覚醒した百合は駆けつけた警察官や機動隊にまで襲いかかる。血迷った少女を止めたのは七十歳あまりの老人だった。男の名前は、南川典膳。超実戦派柔道、戮道館の創始者であり、引退したUGNの元支部長であった。

その場にいた刑事、谷修成の取りなしで百合は暴力沙汰を見逃してもらう代わりにUGNに保護され、典膳の弟子となった。

師匠の教えを通して己の中の野獣を飼いならす術を知った。前に助けた同級生の朝香ひまわりと親友になり、本当の自分を打ち明けられる相手もできた。一歩また一歩。不器用によろめきながら、少女は少しづつ自分の青春を歩み始めたのだ。

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百合の実家である獅子神家についての補足です。

獅子神家の起源はおおよそ応仁の乱までさかのぼる。その始祖らはレネゲイドウィルスの亜種株の保有者であり、ウィルスを100%の確率で子孫たちに感染させ、休眠状態に持ち込む秘儀を編み出した。

この秘法で施された者は半覚醒者となり、覚醒者らには遠く及ばないものの、傑出した能力を持つようになり、侵食率もゼロか小数点以下に抑えられる。

しかし20年前のオリジナルウィルスの流出をきっかけに一族の中から覚醒しジャーム化する者が後を断たなくなった。追い詰められた獅子神家は秘法を解禁し、UGNのコードウェル博士に助けを求めた。事態は好転するかに思えたが、ランカスターグループの工作員の介入で博士の治療と実験は失敗。獅子神家の大人の大半は覚醒し、間を置かずしてジャーム化した。数百年の歴史をもつ一族と彼らの本拠地はたった一夜で壊滅した。コードウェル博士とエージェントたちは命からがら村を逃げ出した。

幼い百合が惨劇を生き延びたのは、たまたま村を離れていたおかげ。帰ってきた彼女が目にしたのは廃墟に変わった故郷、怪物に変わり果てながら山に消えていく母、そして荒れ果てた家の中で崩れ落ちるように祈り続ける祖母の姿だった。

百合と祖母は逃げるように東京へ引っ越していった。しかし一族壊滅の記憶は少女の心に深い傷を残し、百合は血と暴力に塗れた幼年時代を送ることになる。

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