現在、UGN日本支部直轄の、少女のオーヴァードを保護するための機関『Garden of Lily』のエージェントとして活動している。かくいう満弦も、彼女らに手を差しのべられた少女の１人だからだ。

数年前、まだ満弦がオーヴァードではなかった時。交通事故に遭い、数日生死の狭間をさ迷った。一命は取り留めたものの、次に目覚めた時には下半身付随となっており、同時にオーヴァードとして覚醒していた。
満弦は目を覚ますと、全てを理解したように、悲観した様子も見せず、電動車椅子の作成を始める。その発想と技術力は常識を越えており、余人から見れば事故の拍子に何か取り憑いたようにでも見えただろう。そして、満弦からすれば余人は、恐ろしく話の通じない生き物でしかなくなっていた。
その後しばらくして。匿名でのガジェット販売、技術提供、その他あまり誉められたものではない手段で生活資金を得て、工房つきの一軒家からネット越しに世俗にちょっかいをかける日々を送っていた。そんな満弦の下へ、迎えが来た。ファルスハーツという組織の者だと名乗る人物だった。これまでの自分の仕事から、この場所とオーヴァードの能力を見抜いたという。満弦は追跡できないようにしたつもりだったのだが、それを見破ってわざわざ自分を訪ねてきたのだ。そんな彼らに、久方ぶりの興味を抱いた。…今思えばきっと、寂しかったし、退屈していたんだと思う。世界の変革のために力を貸して欲しいなどと言う男の誘いに満弦は乗った。
だがすぐに。本当にすぐに後悔することになる。だってついていって話聞いたらめっちゃテロリストなんだもん！真面目な良い子ちゃんではないが、見知らぬ誰かの生活を破壊してまで成したいことなどないぞ！！隙を見てそろそろと逃げ出そうとするも、当然のように見つかった。得体の知れない能力で攻撃され、満弦の体は飛沫を上げて車椅子から弾き落とされた。「ああ、ボクの能力さえあれば意思など不要ということか」などと考えながら、千切れた自分の肉体が逆再生のように集合していくのを見やる。荒事の備えなどない満弦は、次にどうするべきかもわからなくなり、ただ痛みと不気味な高揚感に流され呆然とする。そのまま血溜まりに顔を下ろしかけた、その時。
鉄錆を吹き飛ばす涼やかな風と、淡い花の香り。
今度こそ、はぐれた少女に迎えが来たのだった。