あれは一体、どれだけ昔のことだっただろうか。
ある異国に、一人の画家がいた
画家は生涯、たった一つのものしか描かなかった
庭の池に咲く蓮の花。血のように赤く、なぜか何年経っても枯れることのない不思議な花。
これは微弱なレネゲイドを宿したEXレネゲイドの植物だったのだが、この時点では蓮は何の力も、意志も自我も持たなかった
画家は蓮を描き続けた。何百枚、何千枚と描き続けた
その在り方を、蓮はずっと眺めていた

数十年経って、画家は死んだ
豪雨によって庭の池は崩れ、蓮は河を下って流れていった
この頃にはEXレネゲイドの蓮は、画家が描き続けた自分自身の強固なイメージを基に、周りの植物を使って仮初の体を作ることができるようになっていた
画家の姿を借りて旅を始めた蓮に、しかし画家の在り方を真似る以上の自我はなかった
流浪の画家の姿は人の記憶には残らず、幻のように消えていった
光や幻覚物質で描いた絵も一つも残らず、描いたそばから消えていった

いつ頃からだろうか。自我のない蓮は、出会った人と語らうことを始めた
当初はそれは、単に画家のやっていたことを真似ていただけに過ぎなかった
何かが変わったのは、レネゲイドビーイングの同胞たちと出会ったことがきっかけだっただろうか。
レネゲイド拡散以前に存在していたレネゲイドビーイングの多くは微弱な力しか持たず、確固とした知性も持っていなかった
彼らを訪ね、声にならない声を聴くうちに、蓮はゆっくりと知性のようなものを発達させていった

そして20年前。レネゲイド拡散事件
中東での輸送機の爆発事故と同時に急速に世界に拡散したレネゲイドは、レネゲイドビーイングの進化を促した
数を増やし始めたレネゲイドビーイング達に触発され、蓮の自我はほぼ今と同じ形に完成した
蓮はこの頃から「桜蓮」の名前を名乗るようになった

次の転機は10年前。面影島事件
桜蓮は、自分自身の衝動、根源的な欲望が何であったかを自覚した
非才(ぼく)が今まで生きてきたのは。あの画家がついぞ描くことのできなかった一枚の絵を描くためだったのだ。
桜蓮は、自身が死に際の画家の無念を感じ取り、それを精算するために代わりに生き続けていたことを、ようやく自覚した。

桜蓮の描く「絵」は、紙の上ではなく空中に描かれる
その正体は、領域内の土や塵にソラリスの幻覚物質を混ぜ込み、因子によって空中に固定したもの
その性質上桜蓮の領域から外れると跡形もなく消えてしまうが、領域の内部では絵に描かれたものがまるで本当に存在するかのように、強固な実体を持つ
桜蓮はこれを攻撃にも防御にも利用する
これとは別に光のみで描かれる、何の効果もない絵（＝《天使の絵の具》）も描くことができる
桜蓮は世界を巡り、古今東西の絵画やその技法を知ってはいるが、好んで描くのは東洋風の「絵」になる

遺産『海鳴の石板』
その力で海を割ったとされる偉人が残した、人が守るべき契約の言葉を記した石板
(公式ルールブックでは明言されていないが、いわゆるモーセの十戒を記した石板)
嵐や海流を操る能力を持つ
遺産とは、20年前のレネゲイド拡散事件以前から存在する、強力なレネゲイドを宿した物品のことを指す。厳密には海鳴の石板だけでなく、桜蓮自身も遺産に当たる

自身が持っている海鳴の石板の由来については桜蓮は覚えていない。なにしろ、自我がないまま旅をしていた頃に手にしたものなのだ
朧げに覚えていることとしては誰かに「渡された」ような、「託された」ような、そんな記憶がある
自我がなく、人の記憶に残らない桜蓮が持っている限り、強大な遺産の力が発揮されることはない
桜蓮に渡すことで海鳴の石板の存在を隠匿しようとした人物がいたのではないか、などと桜蓮は推測している

石板に書かれた「神」なる存在について桜蓮は知らないし、信じてもいないが、そこに書かれる戒律については好ましく思っている
桜蓮にとって「人とはこういう生き物である」と定義するための最も手近な資料のひとつ
海鳴の石板を持つものは合理的な判断を優先し、情を忘れていく
桜蓮の意志や感情が希薄なのはこの遺産に影響されている部分もある

コンセプト:"ワンオブミューズ"で交渉を芸術に置換するアタッカー+デバッファー
ミドルフェイズで芸術道具を購入して〈芸術:絵画〉達成値を上乗せ
情報収集は万能コネのミーミルの覚書でなんとかする

最初のマイナーで《オリジン:プラント》使用、【感覚】使用した判定の達成値+10(12)
メジャーでは《絶対の恐怖》《神の御言葉》による交渉攻撃
相手の攻撃に対しては《命の盾》で〈交渉〉による回避
どちらも〈芸術:絵画〉に技能を置換して【感覚】で判定を振る

命中および回避の期待値は大体以下の通り
ミドルフェイズ:5DX10+19＝30
クライマックスフェイズ:7DX10+21=33
足りない分は海鳴の石板と妖精の手でなんとかする

1シーン1回のみ《束縛の領域》で相手の攻撃を失敗させられる
〈交渉〉で相手の命中達成値を上回る必要があるが、これも〈芸術:絵画〉で判定を振る
海鳴の石板および妖精の手を絡めた〈芸術:絵画〉期待値は50~60程度