きっかけは家族が増えると知って、今まで自分が独占していた両親や祖父母を弟か妹に奪われると感じたからだ。
「弟も妹もいらない！」と泣いて困らせる俺を連れ出してくれたのは父さんで、俺を助手席に乗せて当てもなく車を走らせた。
「急に変わらなくていいよ。理輝は理輝だ。いつも皆を楽しませて引っ張ってくれる大事な俺の息子」
「だから、新しい家族になるその子の事も、いつもみたいに元気に笑って、お前が手を引いてやってくれ」
　そう言われれば、自然とささくれ立った気持ちは落ち着く。そうか、俺は俺でいいんだ。父の言葉に、俺はようやくいつものように笑えた。
　帰り道にジュースが飲みたいとわがまま言って、高速のSAに寄ってもらった。
「1人で大丈夫か？」
「俺お兄ちゃんになるんだから、1人で大丈夫！」
「父さんはここで待ってて！」
　俺は少しだけ背伸びをして、1人で車を出た。
　
　何を買ったのかは覚えていない。ただ、少し外が騒がしくて、ボタンを押し間違えないようにと思っていたことは覚えている。
　
　やけに人で込み合った駐車場で父の元に帰る。
　車が無い。
　違う、別の車に押しつぶされているのだ。
　ジュースの缶を大事に持って、俺はどうにかして父の隣に戻ろうとした。
　乱暴に壊してしまった玩具みたいに、車は原型を留めていない。
　色んな液体が地面に広がっていく。
　そこからの記憶は酷く曖昧で、あまり覚えていない。
　
　結局家族は生まれてこなくて、父は俺の世界から姿を消した。
　その事故を後悔しない日はないけれど、俺が俺である事は変わらない。
　ただ、俺が俺として、自分らしく生きていると父の声が聞こえる気がする。
「お前が手を引いてやってくれ」
　だれを？
　その答えだけはずっと見つけられないまま、俺は今日も元気に笑って生きていく。

時々見た目（目の色や肌）に変化があったがそこまで気にしていなかった。
しかし、いつものように陸上部の個人練習でタイムを計ると人が凡そ出せるタイムではなかった。
それ以来陸上部をさぼることが増え、友人にもそれを言えないでいる。

＜ハンドアウト＞
PC①
ロイス：伏見(ふしみ)　煉(れん)　P 友情／ N 任意
君は、光が丘高校に通う高校生だ。君には高校入学来の親友が二人いる。ＰＣ②と伏見煉だ。
彼らといつも通り話しながら下校する途中、一人の青年に偶然出会ったことから君の運命は少しずつ動き出す。

PC１：高校生／未覚醒　
シナリオロイス：自分自身　P 任意／ N 不安
君は、最近自分の身に起きている変化に気付いている。それはどう考えても現実的でなく、夢物語のようなもので、親友の二人にすら相談できていない。だってまさか、自分が人間じゃないかもしれないなんて世迷言を言ったら、彼らがどんな顔をするか分かった物じゃないから。