体内の血液が全てショゴスの遺体と入れ替えられており、その影響で全身がショゴスと同じ原初の細胞塊に置換されている。
ショゴスは死してなお少女の肉体の主導権を狙い、どんな時だって安心はない。少しでも油断すれば、あるいはきっかけがあればドロドロに溶けてもう2度と戻れないかもしれない女の子。
けれど、強い意志と確かな覚悟があれば夢見る未来の自分そのものに、或いはそれ以上にも変身できるかもしれない無限の可能性を秘めた女の子。

五歳の頃、狂信者の集団に捕まった。
七歳の頃、一緒に捕まったお母さんが怪物になって死んだ。
九歳の頃、UGNが助けに来てくれてわたしは自由の身になった。
十歳の今、わたしはUGNの養護施設で面白おかしく暮らしています。
生きててよかったー！人生最高！



なんて、そんなわけないじゃん。

わたしとお母さんがヤツらに捕まったのはお父さんのせいらしいです。お父さんが偉い人だったから、当てつけで捕まったらしいのです。そのお父さんも、もう自殺してしまったけど。
血の代わりにわたしの体を流れるドロドロの怪物は、毎晩わたしを殺そうとします。研究所でショゴスと呼ばれていた怪物はいつだって体の主導権を狙っているのです。
この養護施設の子たちもみんな、似たような境遇なのだそうです。こんな悲劇、どこにだってあり溢れているのです。
この世界は嫌いです。何一つわたしに欲しいものをくれないから。
この人生が嫌いです。何一つわたしに救いを与えてくれないから。
だから、わたしはいつだって死にたいのです。毎晩消えてしまいたいのです。

けれど、
けれど。
わたしにも夢があります。
あの暗くて汚くて嫌な臭いがする研究室の壁を壊してやってきた｜救世主《ヒーロー》。その姿があまりにも眩しくて綺麗だったから。
わたしは彼の役に立ちたいと、彼のようになりたいと。
そう、憧れてしまいました。

星が夜の果てに輝いている。
どうしようもなく遠く高く輝く、“｜彼方《ミライ》の｜星《ユメ》”。
どれだけ目を逸らしても、どれだけ俯いても、その星が輝き続けるものだから。
気がつけばわたしは、どんな夜だって“星”しか見えなくなっていたのです。