赤菱仁愛、露西蒼汰、武者緑斗の「チーム三原色」の三人は、最近広まっているある都市伝説の噂について調べていた。

なんでも、三人の通う高校から一番近くの高校の最寄りのバス停で、夕暮れ時に一人で待っていると、路地裏から声が聞こえてくるらしい。
「かえして……私の目、かえして……」と。
断れば目を抉りとられ、代わりに眼鏡を差し出せば助かるのだそうだ。

……。
どこかで見たような話。そう思う人が大半だろう。メガネ"男"なのに女性の声だったりと粗も目立つ。その高校の生徒が適当に作ったちゃちなお話だと思うのが妥当だ。
三人も最初はそう思った。しかし、彼らはその時陥っていたのだ。
暇に。
目ぼしい都市伝説が見当たらず方向性を失い、暇に溺れそうになっていた彼らは、暇つぶしがてら噂の真実を確かめてみることにした。

夕暮れ時、眼鏡をかけている緑斗が件のバス停で待ち、仁愛と蒼汰は離れた場所から見守っていた。
すると。

「……かえせ……、め……かえ……！」

緑斗の耳にかすかに声が届く。それは聞いた話とは違い男性の声に聞こえたが、やはり背後の路地裏からのようだった。
二人に合図を送り、緑斗は慎重に路地裏に近づき、様子を伺う。
そこにあった光景とは。

「貴様！俺のお気に入りの眼鏡を返せ！コラ！貴様どうせ眼鏡じゃなくてついてる石にしか興味がないんだろう！返せー！」

カラスと戦う男子高校生の図だった。

話を聞くと、彼はこちらの高校の生徒で、少し前にこのカラスに持っていた眼鏡を奪われ、それから定期的にここで格闘を繰り広げているらしい。
その間にも被害は増え、光り物が大好きな"奴"を誘きだすために使った三つの眼鏡(輝く石つき！)も奪われてしまったのだそうだ。
彼が言うには、本当に眼鏡が好きならこのまま渡してしまうこともやぶさかではないが、"奴"はそうではなくただ光るものが欲しいだけなので取り返したいのだという。三人は首を傾げた。

それから、その男子高校生に頼まれて眼鏡奪還を手伝い、無事に盗られた眼鏡は彼のもとへ返った。
都市伝説の真実は、眼鏡を取り戻すため奮闘する男子高校生だったのだ！
めでたしめでたし。

……想定外だったのは、その怪異が三人にひどく懐いてしまったこと、だろうか。

幼少期は親の方針により細かく管理され、何で遊ぶかさえも決められた生活を送っており、次第にものごとへの興味を失い、感情をあらわすこともなくなっていった。
勉強のしすぎで視力が悪くなり眼鏡をかけることになったが、ひとめぼれした眼鏡にしたいという希望が通ったことでめっちゃ嬉しー！になり抑圧から解放された反動ではしゃぎ倒す。
しかし自分のわがままが原因で眼鏡を失ってしまい、言うこと聞かないとこうなるんやな……となる。
あと親も縛りつけすぎると良くないな～となったので以降は好きにさせてもらえるようになった。
ただし親に関しては未だに管理者という認識が強く、どこか他人のような気がしている。

敬称略
シナリオ・GM：iVa
PC1：米鐘羽 燐／梅丸
PC2：坂月 溢己／NITL0X
PC3：千菜夏 すいば／九杯目
PC4：馬頭 偲真／しそ
PC5：牧田 こま／こてる