頑固で真面目。常に冷静でいようと心掛けているためにあまり表情が動かない。その様子から一部では「人形のようだ」と言われている。
　その理由は、一般のエージェントより優れた能力を持っていた姉が任務の最中に“アドバイザー”によって命を落としてしまったため。強くあらねばならないと自らに言い聞かせ、自らの力を高めるためにあらゆるものを捨て去ってしまった。それはすべて、生き残りたいという思いが根底になるためである。

　双子の姉である環鳴紫陽が亡くなったのは、10年前の誕生日。霧谷雄吾とともに“ドクター”の実験施設に潜入、そこで多くのFHエージェントと交戦し“アドバイザー”の手によって短い生涯を終えた。この任務で紫陽が介入した実験の実験体であったのが、瀬戸守夕雨である。結果的に、紫陽が瀬戸守夕雨の命を救ったことになる。
　最初、紫夕は瀬戸守夕雨に対し「姉が救った命」として、「自分が守らなくてはならない」と思っていた。姉の残した、一番価値のある忘れ形見のような感覚であった。しかし、任務のために彼と過ごすうち、それは義務感から願望へと変わっていった。「大事だから、一緒にいたい。一緒にいたいから、守る」のである。

環鳴紫夕と姉・紫陽はともにUGNで生み出された、コードウェル博士の複製体である。
この事実に対し、紫夕はどう受け止めてよいのか、今も迷っている。
自分たちは人間ではないのではないか、双子ではなかったのか、“普通”からかけ離れたチルドレンの中で、さらに“普通”から離れた存在だったのか。自分たちはいったい“何”なのか。
ただ、紫夕は今までの生き方や考え方を変えることはできないだろうと思っているし、変える気もないことだけは確かである。
もう、大切なものを失いたくないから。