武器を操る異能。
　道具の扱いに精通する程度の些細な能力。肉体改造と常時着込むパワードスーツで最大限強化している。
　常人では持ち上げる事すら不可能な武器を器用に取り回し、遠近の戦闘に対応する。
　思い切りがいいのは自前であり、FHチルドレンのスタンダードかもしれない。

　高級官僚の父と、箱入りの母。恵まれた家庭に産まれる。
　教育熱心な両親は文武について英才教育を施し、子も精一杯応える。
　そんな理想的な円満の中で育った未完は、両親を尊敬しているのと同時、いつしか母への恋心を抱えていた。父は第一の障害である以上、いつかは殺さねばならないのかもしれないと考えて、悲しい気持ちになっていた。

　中学への進学と同時、かねてより計画していた告白を決行する。正々堂々話せばわかってくれるかもしれないと期待していたが、結果は惨憺たるもの。
　その時、冷徹な怒りが脳を支配した。理屈を超えて効率の良い殺害方法を理解できる。
　ならば仕方ないと同席していた父の命を奪うべく振り下ろした椅子は、身を挺す母の命をしっかりと害した。
　
　事ここに至っては何の意味もないが、庇うものが居なくなった父に止めも刺して。
　時間が止まったような家の中、望んだものが何一つ手に入らない結果に立ち尽くしていると、一人の男が現れる。

　目撃者を消さなくては。そう重い身体に鞭を打って再度の殺人に及んだ未完を軽くいなし、白いスーツの男は言った。
　力は取り逃した物を嘆く為ではなく、欲望を実現する為に宿ったのだと。
　その言葉に感銘を受け、彼の下で力を磨き、夢を追う事に決めた。