とある実験施設の産まれ、数多なる子供の中のひとり。武力を得るために覚醒を促され、己の中に自らを喰らう蛇を宿す。
　様々なシンドロームを持つオーヴァード達の遺伝子を組み合わせ掛け合せ、出来上がったのが「エグザイルシンドロームの傾向が強い」ピュアウロボロス。様々を上手く扱えるはずなのに、ひとつの芸事しかできない粗悪品。
　端的に言って、失敗作だった。
　けれど失敗作でも出来ることはあったようで、それは己の姿かたちを簡単に変えること。前述した傾向のお陰である。
　であれば、と。純粋な火力として育てるより、どこへでも放り込める力を育てればいいと舵を切ることとなる。

　転機、にも満たない出来事。
　昨日競い合った友人を今日は処分する。
　一昨日あやした幼子を明日は切り刻む。
　さっき生まれた生命を今から踏み潰す。
　適合しない子供たちが次々に死んでいく。自分の代わりに腕を引かれた子供たちが怪物になる。
　気づけば自分が一番年上。磨り減って削れて居なくなった子を思い出して、孤独に喘ぎ涙を流す。勿論それは他の子供も例外ではない。
　ふ、と。自らの｜才能《ちから》を思い出して。
　自我なんて必要ない、様々な人間と知識の集合体。であればこの身で「成」れるのではないかと。誰かの求める何かを映すことが出来るのではないか、と。考えて実際に行って、驚くほどに簡単に出来てしまった。

　誰かが望む「誰か」を造る。成る。変える。成る。壊す。成る。消える。成る。繰り返し繰り返し、過去も今も未来も、自分という「面」を変えて書き換えて。
　たった一人で万人を生み出して、望まれるままに生きている。