警察の家庭に生まれた彼は、両親の影響を強く受けたことで『悪き者を挫き、弱き者を助ける』という強い正義感のもとで行動する男に育った。

　その後、彼自身も刑事となった後は、「親の七光り」という前評判を持ち前の信念と実力で跳ね返し、同僚や部下からの信用を勝ち得た末に捜査チームを任されることとなる。
　部下を思いやり、時に厳しく時に優しく接してきたことで、彼のチームの連携は他と比べても一際優れたレベルにまで育ち、難事件に対しても迅速かつ確実に解決へと導くだけの実力を備えるようになった。いつしか彼は、捜査チームの中で誰よりも熱く誰よりも優しい人物だとして、部下に慕われる中心人物となっていた。

　だが、どれだけ彼らが優秀なチームであっても、所詮無力な一般人であることには変わりなかった。
　世界の裏側でレネゲイド解放が起き、ジャームによる被害が顕在化し始めた頃、彼の捜査チームが追っていた事件が不幸にもジャームへと繋がっていた。

　応援も呼べない状況下でジャームと交戦することになった彼らは、持ち前の連携によって攻勢へと出るもワーディングによって一瞬で壊滅する。身動きの取れない部下たちが1人ずつ殺さていく中、目の前にジャームが現れた彼は死期を悟る。だが、近くにいた部下の1人が、咄嗟に目の前に飛び出して彼を庇って死んだ。
　そこから先のことは、彼自身もよく覚えていない。我に帰った頃には、捜査チームの死体とジャームの無残な遺体のみが現場に残されていた。

　これを境に、彼はジャームを殺し回るようになった。
　幸か不幸か、彼は1人で戦えるほどの強力なオーヴァードであった。元々あった捜査能力に執念が加わり、多い日は1日で5匹のジャームを単独で討伐していた。
　当時の彼は、人体の限界以上の動きを続けることでボロボロになっていく己の身体を、電気信号で無理矢理稼働させ続けることで戦い続けていた。彼の戦闘の跡には、ジャームの残骸と満身創痍の彼しか残らない。己すらも破壊し尽くす姿から、彼はいつしか"壊し屋"と呼ばれるようになった。

　そんな彼を引き止め、R担へと引き抜いたのが谷修成であった。勧誘された当初、復讐の末に果てることも考えていた彼は、組織の邪魔になると言ってこれを一度は断った。しかし、谷修成の説得により、部下たちが残した遺志の真意を理解した彼は、彼らのような犠牲者をこれ以上出さないため、R担の刑事として日常を守ることを決意することとなった。

　そして現在に至るまで、彼はR担の刑事として活動を続けている。今の彼の目的は、ジャームを倒すことではなくなった。
　UGNが到着するまでの時間を稼ぎ、被害を最小限にする。そして何より、仲間の遺志を継いでいくために生き残ることである。