春日家に生まれ、籠目市を支配する春日晴臣の弟として生を受けた生まれながらのオーヴァード。
"感情"を操るレネゲイドの行使に優れ、幼い頃からレネゲイドコントロールにも秀でていた。
その能力と、大人達──FHに従順な様から、FHエージェントとしての将来を当然の様に約束されていた。

───しかし、時雨が欲しかったものは称賛でも賞賛でも勝算でも無い。
ただ普通に、家族と共に穏やかな時間を過ごしたかった。

それが叶わぬ願いであると知った時。永遠に、手に入れられないのだと妄信した時。
春日時雨はその名を捨て、籠の中で朽ちていくのではなく、檻の中で飢え死にする事を選んだ。

意味の無い事だ。
世界を支配するFHに反逆するなど、全く意味の無い事だ。
どんなに反逆の狼煙を上げても。
牙を立てても。
刃を振るっても。
FHを打ち倒すことなど、出来ない。
春日家に居たからこそ、それが僕には────痛い程分かる。


こんなことに意味はあるのかな


『ブランク』は、ずっと自らに問いかけ続けている。

それは猛毒だった。
得たかったものが、其処には全て揃っていた。
暖かい。温かい。あたたかい。
それは、ブランクにとっては余りにも、あまりにも。
ただ、辛かった。