緋色も輝いていた時代がある。
若くしてUGN支部長の座にまで上り詰めた彼は、その腕を見込んである地域に潜伏するジャームを捕獲する作戦を仰せつかった。

いつものようにしていれば、今回も上手くいくだろう。
なにせここまで失敗らしい失敗はしてこなかった。

今日も、明日も、それから先も。
きっとどうにかなる──そんな、甘ったれた思考が災いしたのだろうか。

結果、彼が率いていた仲間は全滅。
奮闘空しく無辜の市民の多くが犠牲となった。

荒野と化した瓦礫の街に残った命は二つだけ。
衝動に呑まれた輪廻の獣と、血を被った緋き鎧。

先に膝をついたのは──獣の方だった。

ありがとう！ありがとう！
あれだけの犠牲を出しながらよく耐えてくれた！
これで僕らの研究はまた一歩進んでくれるだろうさ！

そうはしゃぐ研究者の胸倉を掴みたい衝動を、以前の自分なら持っていたかも知れなかった。
胸にぽっかりと空洞ができてしまったようで、感情のままに動くことができない。

程なくして、彼は暇を申し出た。
戦えるだけの火は彼の胸の内にない。

全てあの戦場で、灰になってしまったから。