半年前に姉夫婦を謎のひき逃げ事故で亡くし、2歳の姪を養子として引き取った。
多忙でなかなか顔を合わせられない妻、紀香。
姉を喪ってから人が変わったように仕事にのめり込む母、洋子。
そしてまだまだ手のかかる幼児の美桜。
3人の女性に振り回されながら怒涛の日々を送る一般人。

仕事が終わり、会社の倉庫で姉の不審死についてぼんやりと思いを馳せていたその夜。
ふと、何処からかふわりと漂ってきた花の香り。
それに気づいた瞬間、激しい頭痛と目眩、燃えるような関節の痛みに襲われ、車内で意識を失う。
目覚めた時には既に、体は変貌を遂げていた。
制服の隙間からはみ出す黒い体毛、鋭い爪を備えた獣の手。
慌ててバックミラーを覗き込む。賀来 忠治という名の人間はそこにはいなかった。
鏡に写っていたのは、熊のように巨大な黒犬だった。

戦闘態勢に入ると、二足歩行の黒犬の獣人に変化する。
敵に接近して噛み付く、もしくは拳で殴りつけるインファイター。
状況に応じて完全に黒犬の姿を取ることもある。
犬種イメージはボーダーコリーやオーストラリアンシェパード。
体長1m程で元の犬種より格段に大きい。
見た目を変化させているだけなので、内臓や血液は人のものと変わらない。
人の姿でも能力を使える筈だが、オーヴァードの力への恐怖や抵抗感があり獣の姿の時にしか使わない。
獣化で服や靴が破れるので、手持ちのデイパックやトラックに着替えを用意している。

妻と実母が大の犬嫌いな事もあり、覚醒や異能について伝えられていない。
破壊衝動に揺さぶられやすく、ジャーム化への恐怖が強い。
オーヴァードとして得られた報酬は自分が死んだ、ジャーム化した時に家族に送金できるように全額貯金している。

【賀来 忠治専用ハンドアウト】
あなたはT県C市で宅配会社に勤めるくごく普通の配達員――――――だった筈の、覚醒したばかりのオーヴァードだ。
あなたはある日、一日の仕事を終え会社の倉庫に停めた車の中で物思いに耽っていた夜。
ふと、どこからかふわりと漂って来た花の香り。それに気が付いた瞬間、激しい頭痛と目眩、燃えるような関節の痛みに襲われ、あなたは車内で意識を失った。
暫くして、目覚めた時には既に体は変貌を遂げていた。制服の隙間からはみ出す黒い体毛、鋭い爪を備えた獣の手。
慌ててバックミラーを覗き込むと、そこに映っていたのは賀来忠治という名の人間……ではなく熊のように巨大な黒犬だった。

あなたが突然巨大な黒犬へと変身してから数日が経つ。
またいつ黒犬へと姿が変わってしまうのかと落ち着かない日々を過ごしていたが、幸いな事にあの日以降何事もない、いつもと変わらない日々が過ぎていた。
あれは……夢だったんじゃ？
あの日の出来事が徐々に現実味を失って行き、そんな事すら考え始める。

そして、今日も何の変哲もない日常が過ぎて行く……筈だったのだが。
朝の仕度をバタバタとすすめるあなたの携帯が着信音を鳴らす。
携帯を確認すると、相手は会社の部下である佐見 啓介からだ。
『相談したい事があります。今日の昼休みに少しお時間を頂けますでしょうか』
いつもの様子とは違う固い文面にピリ……っと緊張が走る。
相談したい事って何だろう？

ロイス：佐見 啓介（さみ けいすけ）　推奨感情　P好意／N不安
あなたの勤める宅配会社の社員。今どきの若者らしく言動が若干ゆるいが、仕事ぶりは真面目で丁寧。そして、あなたに非常によく懐いている若者だ。数日前に他人には話せない秘密を持ち、落ち着かない日を過ごしていたある日。佐見から「少し相談したい事がある」とあなたの携帯へとメッセージが入った。