学生時代、街中で発生したメモリ所持者の起こした暴走事件に巻き込まれ片足を喪った。表向きは大規模な事故として処理されている
この時のメモリ使用者は、詳細は伏せられているが、自ら望んだというよりメモリの売人に強制的にメモリを植え付けられ暴走した者だったらしい

このため、事件の犯人ではあるが情状酌量の余地ありとして大きな罪には問われていない

事故後、メモリの怪物を目撃していた雨音に対しUGNや警察は記憶処理を行おうとしていた。しかし何故か記憶処理はうまく働かず(後にこの原因として、片足を喪った際に既に半ばオーヴァードに覚醒しかかっていたのだろうと推測されている)、やむを得ず世界の真実を伝えた上で厳重な口止めが行われた

雨音は犯人が罪に問われなかったことを、理屈としては納得した
しかし、感情がそれを許容できなかった
『自分は夢も未来も家族も、全てを喪ったのに、どうして？』と

理屈として『正しい』のはわかっている。けれど───

鬱屈とした気持ちを抱えていた雨音に、一人の悪意が接触した
メモリの売人が、雨音に「君の全てを奪った奴に復讐する力が欲しくないか？」とメモリを売り込みに来たのだ

売人が誤算だったのは、雨音の『復讐』が向けられた方向
雨音は『メモリの存在』そのものと、それをばらまく者に激しい怒りを覚え、それによってオーヴァードに覚醒した

その後雨音は、メモリ犯罪に対する怒りをぶつけるように、メモリ犯罪に立ち向かうようになる
警察やUGNの協力者になる道もあったが、雨音がその道を選ぶことはなかった
自身のメモリ犯罪を憎む気持ちから、『正しく』あることはできないと感じ、警察やUGNとは一線を引くことにした
積極的に敵対するつもりはないし、協力できる部分は協力するつもりはある

息吹市にてまことしやかに噂される都市伝説の一つのような、そして実際に存在している小規模(？)なアングラ組織
『園長』と呼ばれるものをリーダー格として、構成員は互いを動物のコードネームで呼び合っている
正確には『組織』というより『互助会』『同盟』のようなもの
それぞれが個人としての目的を持ち、UGNや警察などの組織やそれに協力するイリーガルという立場に属することを選ばずに行動している
UGNや警察に関わることを避けるだけあって、構成員の中にはあまり大声では言えない目的を持つものも多い

メモリやメモリの怪物、売人に対する敵意を持つものが多く、立場としてはヴィジランテのようなもの

『動物園』自ら意図して、曖昧な噂を流すことで警察では集めにくい情報を集めやすい立ち位置を確保している
噂の一例として、メモリ売買に関わる組織というものもあり購入希望のものが訪れたことも。あるいはメモリの被害にあったものが何らかの事情で警察を頼れず動物園に来たことも

『動物園』に属するものたちは原則として互いに互いを詮索しない
互いの事情には首を突っ込まず、口を出さず、協力できる部分だけ互いに協力する。あくまでも優先するのは己の目的なのだ

構成員は普段、それぞれ各々の日常生活を送りつつも、誰かが動物園のネットワークに情報や依頼を流すと、報酬等の条件次第で他の者たちが参加の手をあげる。園長自ら仕事を斡旋することもあるが強制はしない

雨音は自身がオーヴァードに覚醒後、イリーガルとして活動するかどうか悩んでいた時に園長自ら接触しスカウトされた。以来、"兎"を名乗り、日常生活ではブックカフェを営みつつ、メモリの起こす怪事件に立ち向かっている
目的は、メモリ犯罪の撲滅と、自身を襲ったメモリの怪物にメモリを植え付けた売人への復讐である

因縁のメモリの売人を捕まえた時、自分がどうするかを雨音自身確証は持っていない。殺すのかもしれない、司法に委ねるのかもしれない