ギィ、黒銀、隠樹との出会いをきっかけに目を背けていた現状が変わり始める
自らを死んでいると言い切る幼き主の姿に絶望し、全てを破壊する決意を固めた

結果として騎士は拾われた恩を裏切り、主の親をも斬って捨てた
外道だとわかっていても自分はあの方の家族を奪った
孤独になる苦しみは自分も味わったはずなのにそれでもなお斬った

力口様は妹の代わりなんかじゃない
誰かの器でもない
あの方は生きている。それを誰にも否定なんかさせない

なんて醜いエゴだと、自分でも思う
無垢な信頼が苦しい
それを苦しいと思う資格すら私にはもうないのに

はじめは自らの命を絶つことで彼女を縛るものを全て失くすつもりだった

「一度頸木を絶ったからこそ、また新たに手に入ってしまった、嵌ってしまった首輪もあるような気がしている」
「……前に比べれば自由なことは確かだと思いますが、結局私は、どこかで不自由さを求めているのかもしれない」

彼は誰よりも自由なはずだった
檻を破り、外に羽ばたいたはずだった

それでもなお自由になれないのなら、それでもなお不自由を求めてしまうのなら
私の死ではあの人は救えない

ならば、もはや騎士でなくともよい
裁かれる時が来るまで咎人として欺き続ける
そう決めた

だからこの別れに悔いなどない。あるはずもない

それでもキミが私をもう一度、『姉さん』と呼んでくれるのなら
世界でたった2人の、家族だと言ってくれるのなら

誉なき剣を今度こそ主のために振るうと誓おう

そうして、フェイは再び主と出会う日まで眠りにつくことにした
一輪の造花だけを遺して

「ああ、先にギィに鍵を返しておけばよかったな」
「悪いことした…でもいつか必ず約束は守るから」
「その日まで、さよなら」

事件の後、再び力口の元で暮らすようになる
炎火に託された造花に対しては思うことがあるらしく
「毎日話かけてあげるといい」などとたまに助言をしている

力口が今現在、孤独になやんでいないことを受け止めると
今度は自分の人生について考え始める
永遠の変身状態であるフェイは体の成長が完全に停止しており
現状では力口が人生を全うした後も生き続ける可能性があると指摘されている

その原因は25年前の戦いで暴走した遺産の模造品であり
仕組みを解明できれば解決するかもしれないが
博士が遺したであろう研究資料は軒並み燃え尽きている
当のフェイは（まあお嬢様と一緒に調べていけばいつかなんとかなる）と余裕の構えだ

また、25年前のもう一つの心残りといえばギィのバイクもそうだ
モルフェウスの力でさびや部品の欠けはなんてことはないが
傷ついた状態で返すわけにもいかないだろう、ということで最近は空き時間にバイクの修理・メンテナンス方法を学んでいる
返す準備が出来たら怪軍本部のある山に向かい、喫茶店にでも呼びつけるだろう
25年分の利子を要求されることも知らずに…