オーヴァードとして覚醒する前の記憶が抜けており、気が付けば自分の名前も、家族も、家も、何もかも分からなくなっている状態で発見された。
　手に持っていたのは、謎の禍々しいハープだけだった。
　UGNエージェントによって発見された時は、謎の人間たちだったもの（状況証拠から、おそらくFHエージェント達だったのではないかと推測される）の切り刻まれた死体の山に囲まれていた。
　彼女はただ、その山に囲まれながら、呆然と空を仰いでいただけだった。
　UGNエージェントに発見された後、UGNに保護された。
　彼女は自分の名前も覚えていなかったため、『佐藤弓子』という名前が与えられ、UGNチルドレンとして育てられた。

　戦闘能力は高いものの、前述の通りに人の上に立つには少々難のある性格ではあった。
　だが、所属していた支部の支部長が急遽、別の支部へ移動することになった。
　急ぎ空席を埋めなければならない……そのような事態になった際、白羽の矢が立ったのが弓子であった。
　周囲は弓子が支部長になることは反対し、弓子自身も乗り気ではなかった。
　そのような時、UGN側からいくつかの取引、説明を受けた。

・1つ、あくまで次の人員が決まるまでの一時的な人事であるという事。
・1つ、もし支部長になってもらえるなら、キミの失った記憶を取り戻す為の手助けをする、というもの。

　弓子にとって、昔の記憶は既に価値がなくなりつつあった。
　だが、記憶の片隅にはいつも、大切な誰かがいた、そのような記憶だけはいつまでも消えていなかった。
　悩んだ末に弓子は、あくまで自分自身の為に、この人事を受け、晴れて臨時支部長となったのである。

　弓子が気が付けば持っていた、レネゲイドに汚染されているハープ。
　相手に敵意を持って音を奏でると、その音色は敵を切り裂く。
　敵意、憎悪が強ければ強いほど、その音色は呪いを増し、敵の体を腐らせるという。