UGN中国支部で産まれ、オーヴァードアカデミアを卒業し、本部から日本のP市支部に派遣・応援された14歳。

中国支部の中でも過激な一派が造り出した。
試験管の時点で中から這い出ようとしたらしいので、他の個体よりも早く培養液に移された。
幼少の頃から癇癪を起こす毎に力が漏れ出し、その度に大小問わず事件が多発していた。

物心ついてからも自分のルーツを知りたくなり、「表向き」はUGN中国支部の養護施設"黄家(ファンジェ)"で気を引くために度々暴れ回ることがあったが、
オーヴァードアカデミアからたまたま臨時出向していた先生に悪戯心を発揮し、実験槽から飛び出してちょっと本気で殴り掛かろうとしたところを返り討ちに遭い、その強さに憧れを持つようになる。
そんな先生にもう一度会いたくなって、今度は「自分もアカデミアに行きたい」と別の理由で暴れ回るようになり、とうとう手が付けられなくなったため、今度はUGN中国支部から制圧部隊が送られてくるが、今度は逆に返り討ちにあわせる。
その時に来ていた中国支部の胡散臭い幹部から気に入られ、支部に招待される。
そこで「オーヴァードアカデミアを好成績で卒業したら褒美にお前のルーツを教えてやる」という言葉を支部の上層部に約束させた。

そうしてアカデミアに送り込まれた1日目は右も左も分からず終いで散々な目にあったが、かつて返り討ちに遭ったあの時の憧れの先生と再会し、事情を説明した上で色々と便宜を図ってもらえることになった。
この頃には気の合う同期も1人増えた。何かと対抗心を燃やしては来るものの、何だかんだ世話を焼いてくれたりするので気を許すようになり、姉のように慕っていた。ちなみにハグしようとしたら逃げられた。
その後アカデミア内では常に先生や同期と一緒に歩き回るようになり、本人の見た目とその様子から「アカデミアの雛鳥」と呼ばれていたことは、本人は知らない。
しかし「雛鳥」の名前に違わず、与えられた知識や経験を餌として着実に成長し、最終的には飛び級で主席卒業するという期待以上の結果を出すことで周囲を分からせ、その頃には誰も「雛鳥」と呼ぶものはいなくなっていた。勿論、それも本人は知らない。もう少しで12歳になる春頃のお話。

同期も同じ頃に卒業し、いつか再開を果たす約束を交わし、本人は再び中国へ渡る。
揺らぎようのない実績を引っ提げて再びUGN中国支部へと赴き結果を叩きつけたところ、そこで初めて試験管ベイビーであったという自分の生い立ちを報される。
中国支部の支部長の遺伝子が入っているらしいという情報のおまけ付きで。
とはいえ、顔も声も知らない「親」に何の感情を発露させることも無かったが。

その後、顔も知らない親から黄巾というコードネーム宛に通達が届く。
難しい言葉が並んでいたが詰まるところ、
「UGN本部に出向して、貢献することで本部に恩を売りたい」とのこと。
せめて顔の一つくらい見せても良かろうものを、成程自分のことは道具程度にしか思い入れが無いらしいことはよく分かった。しかもコードネームまで勝手に決めてやがる。
流石に腹が立ったので、可愛い息子が意趣返しをしてやろうと思い至る。

本部に出向して1日目早々、夜中に本部長の居室に突撃したかと思えば、寝巻き姿の本部長へ如何に自称父親を名乗る中国支部長が自国本位なのか、という思いの丈を赤裸々に語って意気投合。
本部長からは体面上1ヶ月は本部に居ることにした上で、「非常識且つ協調性欠落の疑いにつき、半年の謹慎の上で別支部へ転属」という形式上の不名誉を中国支部へ叩きつけ、自分は中国との音信を断って鼻歌混じりで1年後にP市支部へと高跳びを決め込むのであった。後に黄巾失踪事件として、中国支部で騒ぎになったらしいが、彼はそれを知らない。

アカデミアにいた頃には"先生"こと樋野剣の他に、現在のコードネームでは"青龍"こと浅葱ロナともこの時同期として知り合っていた。浅葱ロナからは実力に対する対抗心を燃やされど、世の中の常識や知識に関しては新品のキャンバスの如く真っ新だったため、なんだかんだで世話を焼いてくれていた彼女のことを姉のように慕っている。
アカデミアを飛び級主席卒業する1年前の春頃から樋野剣に度々連れ出してもらっては、彼の仕事を手伝っていた。
その頃から樋野剣からは、「卒業したら、一緒に仕事しような」と誘われていて、当人はとても嬉しかった。
ただ、卒業したら本部に仕事を割り振られる関係上、難しいことは承知していた。その他卒業と同時に、浅葱ロナや樋野剣自身も別の支部へと転属になったため、お互いの所在が不明になったこともあり、半ば諦めてもいた。

前述の黄巾失踪事件(実際には本部で1年間仕事をこなしていた)の後、P市支部で対応しているFHセル「L.ice」がやけにしぶとく生き残っているため、転属という体でP市支部へと赴き、調査・報告を命じられた。
最初はやる気もなかったが、P市支部の支部長が樋野剣ということが判明して途端に元気になる。聞けば彼も本部直轄で、転属という形で現地統制に当たっているとのこと、俄然やる気も出るというもの。

P支部へと転属してからは、中国支部の目論見が多分破綻したであろうことに大変機嫌が良くなり、アカデミアや本部直轄時代以上に張り切るようになった。
特に、"朱雀"と呼ばれる樋野剣を始めとして、"青龍"の名を冠するようになった浅葱ロナ、"白虎"の雪月エナ、"玄武"の勅使河原征十郎(てしがわら せいじゅうろう)で構成されている"四神"とP市支部で邂逅。大変気に入り、自ずと彼らこそ家族と思うようになる。

浅葱ロナには、P市支部で再開してからはより一層突っかかって来られるが、劉自身はコミュニケーションを取る機会が増えたと思い、その度に抱きつこうとするが、やはり無理やり制止される。
雪月エナは殆どP市支部に戻ってこないが、戻ってくる度に"青龍"とのちょっとした言い争いが、それでも微笑ましく見えている。抱きつこうとしても、するりと抜けられて、その度に揶揄われるがそれすら嬉しいひと時として認識している。ただ、"玄武"と話している時は、他の四神よりも親しく話しているのを見て、「あぁ、真に家族とはああいうものなんだ」と羨ましくも憧れて、より影響されるようになったのは、劉自身も気付いていないこと。
勅使河原征十朗はP市支部の古株らしく、"玄武"としての戦術眼は確かで、度々戦術指南を受けている。電子機器が苦手らしく、事ある毎に連絡端末が黒い煙を吐き出しているのを見かねて、気づいた時は劉が代わりに連絡端末を操作することにしている。


劉がP市支部に配属される1年前。(今から3年前)
行動方針が謎なFHセルの一つ「L.ice」。
彼らの抵抗未だ激しく、想定以上に鎮圧されないこと。
P市支部の隊員の誰かが「L.ice」の所持している遺産があるらしいことについて言及していること。
何処からか「アマツムシ」という単語が流れていること。
これらを樋野剣が本部に報告したところ、
本部は彼らが遺産「アマツムシ」を所持・使用していると断定。
遺産「アマツムシ」の調査・回収を任務として当たるよう、極秘で命ぜられることになる。
そしてその翌年、劉自身も樋野剣と共にその調査・回収に当たるよう極秘命令が下った。

墓前に添える花が何が良いのか分からないけど、やっぱり、先生には真っ赤に萌えた彼岸花かなって思うんだけど、どうかな？

先生とここで活動できるようになってからはさ、先生って呼ぶことは少なくなって、朱雀って呼んでたけど…でも、俺としては先生よりももっと親愛を込めてお父さんって呼びたくて、でも気恥ずかしくてさ。
だから親父って呼んで、それも父親としては呼んでない、なんて照れ隠ししてさ。
初めてちゃんと後悔した気がする。
けど、本当の父親が分からない俺にとっては、やっぱり父親だった。
立派な父親だったって、思ってる。

先生が悪者扱いにされるっていうのはさ、そりゃあ世間体としては正しいのかもしれない。
けどさ、残された当事者である残りの四神と俺は、納得はしないわけで。

先生は多分、あの後もアマツムシに対抗して、ロナとエナに生きる力を受け渡したんだよね。
だって、あんなに暖かい火を俺は他に知らないもの。

事が収まってからは、征十郎は先生の代わりに支部長を務めてるし、エナがその補佐をしてる。
エナが先生のお陰なのか、だいぶ前線に出れるようになったから忙しさで目を回してるのは、何だか新鮮だね。
エナとロナは何だか仲良くなったみたい。
一回アマツムシで混ぜられたからなのか知らないけど、より一層に実の姉妹みたいに見える。

ロナはやっぱり何かにつけて俺に突っかかってくるけど、それすらも嬉しい。
…何でロナがそんなに突っかかってくるのか、本人は言わないけど俺は知ってる。
だって、俺から見てもロナは優秀だもん。
それを俺が一足飛びしてるように見えて面白くないんだろうなって。
でも、それでも追いかけてこようとしてるのを見てると、「あぁ、ロナだなぁ」って、愛おしくなる。
俺が学園の頃から頑張ってたのって、元々の目標もあるけど、何よりロナが居たからだもん。
同年代で張り合ってきたのって、ロナだけだし。
だから俺も、もっともっと、って背伸びしたんだ。
会う前から計画してたって言ってたけど、あんなに大切にしてくれたんだもん。
先生は、だからきっとそれも見抜いていたんだろうね。
そうやって、俺だけじゃない、ロナも育ててくれてたんだなって。
そんなロナがへこたれないように常に先んじるの、大変なんだよ？

先生がいなくなってからは、やっぱり物足りなくてさ。
ロナが俺に劣るとか、そういうのじゃなくて。
やっぱり寂しい。

先生の部屋が征十郎の部屋になるって言うから、片付けしてるんだけど、その度にあの動画を見てるもんだから進まない進まない…。

CDを見つけた。
先生、こんなの残してたの？
嫌だなぁ、思わず泣けてくるじゃん…。
面と向かって言って欲しかったなぁ…。
決めた、こんなイタズラ残されたままじゃ未練が残る。
逆にイタズラし返してやる。
CDの方は俺の宝物、誰にも見せるつもりはないけど、パソコンの動画の方くらいは別にいいよね。
あの世でせいぜい困ってもらおうじゃない。

そうして俺は、先生のパソコンをひったくって、自室に持っていってこう言うんだ。


「タッピング&オンエア」


きっと、征十郎を始めとして、みんなすごい剣幕で追ってくるだろうなあ…。
四神の3人は特に、勢い余って殺しに来るんじゃないかしら。
今のうちに対策立てておかないと。

先生。

いや…。

お父さん。
あなたの自慢の息子です。