容姿・経歴・その他メモ

「格好の研究対象じゃない！
　胎児は必ず生かして取り出してちょうだい！！」

研究員が戦闘員に伝えたその一言で、柊刀子の誕生は決まった。

妊娠した女性がジャーム化し、周囲を破壊しているとの通報を受けたUGN。
派遣された戦闘員が現場に到着するまでのわずかな時間に、暴れるジャームを迅速に鎮静化すべきか、胎児の生命を優先すべきかの議論がなされた。
そして当時のアールラボの室長の「レネゲイドウイルス研究を進める貴重なサンプルとなる」との強い主張により、胎児の確保を優先することが決定された。

胎児の救出を優先しなければならないことから、ジャームへの対処は格段に難しいものとなり、その結果、戦闘員の一人が帰らぬ人となった。
ジャームの腹から取り出された子は速やかにアールラボに運ばれ、研究員らの手により生命維持の処置をされた。
そして、ジャーム化していないことが確認された後、研究対象として養育されることとなった。
赤子は研究番号とは別に、「吉野　柊子（よしの　しゅうこ）」の通名を与えられた。


そして10年の月日がたった。

柊子は親の顔を知らない。
入れ替わり立ち代わり世話をしに来るアールラボの職員が、柊子の親代わりだった。

柊子は外の世界を知らない。
必要な知識は研究室内で教え込まれたが、施設の外に出たことは一度もなかった。

そして柊子が10歳の誕生日を迎えた日、研究員に手を引かれて、柊子は初めて研究施設の門を出た。
それは柊子に社会性を教育するカリキュラムの一環。
ほんの1時間ばかりの散歩。
だがその時間の中で、柊子は初めて人の営みを目の当たりにする。

多くの人が行き交う交差点。
同世代の子供たちが校庭を駆け回る小学校。
食べる物を売る店、服を売る店、そんな店にひっきりなしに出入りする人、人、人。
施設に帰還後、「これからは外に出る機会を設ける」という研究員の言葉を聞いて、目を輝かせて喜んだ柊子であった。

だが外の世界を知れば知るほど、自分 -オーヴァード- という存在の異端さを自覚することとなる。

なぜ私は刀を振るっているのだろう？
普通の子は学校に通っているのに。

なぜ私には母も父もいないのだろう？
普通の子には帰る家があって、そこで待っててくれる家族がいるというのに。

己の内に芽生えた「普通への憧れ」。
だがそれは決して叶わないものだと、柊子は諦めていた。
憧れに決別すべく、少女は「吉野　柊子」の名を捨てた。
ただUGNのために刀を振るう、それが己であると自分自身に言い聞かせるために。


そうして14歳の夜、吉野　柊子は「柊　刀子（ひいらぎ　とうこ）」へと生まれ変わった。


現在、15歳の刀子は明るく快活な少女である。
もはやふっきれたのか「なるようにしかならん」をモットーに、与えられた任務に一生懸命に取り組んでいる。
普通に決別するため、普通ではない格好として羽織袴を好んで着用している。

戦闘能力と身軽さは研究施設内では随一であり、敵の懐から羽根が舞うように抜け出したかと思えば、瞬く間に距離を詰め一気呵成に切り伏せる、神速の剣術が刀子の持ち味である。
血の花を咲かせ恍惚とする様子から、誰からともなく「緋色の侍」と呼ばれ始め、それをコードネームに採用し「スカーレット・アーツ」と呼ばせるようになった。

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