容姿・経歴・その他メモ

「こうべを垂れよ！ おもてを上げい！ くふふ、とくと見よ！ 尊きわらわのお出ましであるぞ！」

東京近郊N市に住み着いているレネゲイドビーイング。日本語が堪能だが、なぜか時代がかった古い言葉を話す。
身長三尺八寸、跳ねるように駆ける。
麻布の質素な服を纏い、草鞋を履き、下履きはない。動物の牙をあしらった首飾りを下げていて、黒く短い髪を翡翠の髪留めでふたつ結んでいる。
幼い見た目にまったく相応しくない傲岸不遜な態度を取る。他者をそれほど区別しておらず、大体は「わらわの民」と呼んで庇護意欲を見せる。一部の親交のある個人は意識しているものの、名前を覚えるのは苦手。
天真爛漫を形にしたような眩しい笑顔の持ち主である一方、敵とみなした相手には容赦がなく、その権能を存分に奮って排除しようとする。尤も、それはあくまで幻影による専守防衛であり、強烈な攻撃を行うことはほとんどない。

現代においては、N市を生息地とするレネゲイドビーイングとしてUGNデータベースに登録されている。長い冬眠期間によって固有名称が失われているため、関係者からは単に“あの子/the child”と呼ばれることもある。真名をザナというが、本人すらそれを覚えていない。
ピュア・エンジェルハィロゥである彼女の最たる能力は、局所的な幻影の発生という形で表れる。瞬時に現実の認識を歪めるほどの精巧な投影が可能で、これによって敵対者を遠ざけ、ときにはそのまま隔離する。
また、類稀な千里眼の持ち主。光の屈折と思われる現象によって山の向こうまで見通すことができ、その眼力は次第によっては人の心すら掌握する。「わらわに隠し事は無用じゃ。民の心も分からないでは、わらわはわらわ足り得ぬというものじゃからのう」。

行動原理は、「彼女の土地(すなわちN市)とそこに住む人々を護る」というところで一貫する。機嫌を損ねることも面倒くさがることもあるが、それはほとんど無償の愛と呼んで差し支えない。
もしも誰かが“あの子”を知って、助けを求めているならば、“あの子”は必ず現れる。



むかしむかし、あるところに、ちいさなおんなのこがくらしていました。
そのむらはとてもまずしくて、おんなのこはいつも、おなかをすかしていました。
ふゆになるまえのあるひ、むらでいちばんえらいみこさまが、おんなのこにいいました。

いいこだから、おひさまのところへおつかいにいっておくれ。

おりこうなおんなのこは、もちろんうなずきました。けれども、わからないことはたくさんあります。

おひさまは、どこにいらっしゃるの？

おひさまは、あのおやまのむこうよ。

どうして、おひさまのところへいくの？

さむいふゆを、みんながなかよくすごせるように、おひさまにおねがいするのよ。

かあさまは、いっしょにでかけてくれないの？

かあさまには、とてもたいせつなやくめがあるのよ。

とうさまは？

とうさまも、おやまにいってはあげられないわ。

おんなのこには、だんだんみこさまがかわいそうにおもえてきました。おんなのこがしつもんをするほど、みこさまはかなしいかおをします。
やさしいおんなのこは、しつもんするのをやめました。だいすきなおかあさんが、ついになきだしてしまってはいけないとおもったのです。

つぎのひ、おんなのこは、うまれてはじめておめかしをして、とくべつなふくをきて、おもちをみっつばかりもって、おやまにでかけていきました。
おんなのこのちいさなからだに、おやまのかぜがきびしくふきつけます。
ときには、けわしいさかみちでころんでしまうこともありました。
それでも、おんなのこはあきらめません。むらでもらったおもちをかじると、めげないこころが、まためばえてきたのです。
やがて、くらいとばりがおりてきました。
つかれはてたおんなのこは、こかげでねむってしまいました。おもちもほとんどたべてしまって、あるくげんきはもうありませんでした。

くらやみがきえて、つぎのひになりました。
それなのに、おひさまはちっとも、すがたをみせません。
めをさましたおんなのこは、そらをみあげてこうおもいました。

きっと、あたしがなまけたから、おひさまはおこってしまったのだわ。

おんなのこは、ふたたびあるきはじめました。もうおもちはありませんでしたが、こんどはおおきなゆうきがありました。

おんなのこは、むらをでてから、とてもながいじかんをかけて、おやまのむこうにたどりつきました。
おひさまは、そこにいました。

おひさま、ごめんなさい。こんなところにひとりぼっちで、さみしかったでしょう。

やさしいおんなのこは、おひさまにあやまりました。

おひさま、どうかきげんをなおしてください。むらのみんながこごえてしまうまえに、どうかむらをあたたかくてらしてください。

そうして、おんなのこのおねがいを、おひさまはかなえることにしたのです。
ふゆになっても、むらはあたたかく、みんながなかよくすごしました。

かわりに、おひさまはおんなのことやくそくをしました。
さみしがりやのおひさまは、おんなのこをともだちにして、いっしょにいるようにいいました。
やさしいおんなのこは、それきりむらにはかえりませんでした。
おひさまとのやくそくを、だいじにまもっているのです。

だけれどときどき、おやまや、もりのおくに、かのじょはひょっこりあらわれます。
いまでも、たいせつなみんなが、なかよくくらしているのをみて、くすくすわらっているのです。

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