イタリア人の父と日本人の母を持つ。両親双方とも音楽家。青い目と黒い髪と言うわかりやすい特徴を兼ね備えている。両親からは非常に大切にされ、沢山の愛情を注がれた。また、ピアノの腕に関しても血筋か、或いは本人の才知故か幼いながら優秀な成績を有していた。幼少の頃の記憶は幸福で楽しい思い出ばかりだった。

しかし彼女が8歳になった冬。東京都は首都高湾岸線を舞台にしたUGNとFHとの大規模な抗争、通称『湾岸防衛戦』に巻き込まれ両親共々命を落とす。胴を横薙ぎ真っ二つに裁断されるも彼女の中のレネゲイドが覚醒、オーヴァードと成り一命をとりとめる。一命をとりとめるも、再生が不完全だったせいもあり左腕から下を完全に失ってしまう。

その後はUGNに保護され、保護施設にて生活をする。両親を失ったこと、左腕を失い義手の生活となったことなど深い悲しみに暮れる。昔のようにピアノを弾くこともなく心を閉ざし毎日を過ごした。
そんな中、施設で学園祭のような、お祭りが催されることになった。そんなものには参加するつもりは毛頭なかったが、楽器が昔できた、という理由でマーチングバンドに誘われる。この時に誘ったのが、自分より2つ年下の「宙野　令美」だった。
無下にしてしまうと泣いてしまいそうな、そんな非常に断りにくい表情で頼まれたため、渋々それに応じた。義手と言う素手とは全く異なる感覚での演奏、数年のブランク、もっと言うと担当した楽器がピアノではなくフルートだったこともあり、かなり四苦八苦させられた。それでも音楽一家の出であるという意地で何とか課題曲を習得し、メンバーたちと練習を重ね、発表に臨んだ。
誘われた理由を聞いたところ、楽器ができるからと、何だかとてもいつも悲しそうだったから、とのこと。昔の辛いことはどうしようもないけど、これから楽しいことはきっと沢山ある、沢山作れるってことを伝えられたらいいなと思ったとのこと。
結果は上々。改めて音楽の楽しさを思い出し、人とのかかわりを欲する心が生まれた。これを機に令美も楽器の演奏を始めるに至り、二人でしょっちゅう施設内でゲリラライブを敢行した。場合によっちゃ怒られることもあったが、昔とは激変してしまった今ではあるが、それはそれで幸せな日々だった。

毎日令美と過ごした。まるで本当の姉妹のように。沢山話し、沢山駆け回り、沢山演奏を共にし、沢山共に怒られたし沢山喜ばれた。
過去に一度だけ家族がいないことが寂しい、という話を聞いた。堪らずエリザの口から出たのはアタシがお前の姉ちゃんに、家族になってやるという言葉。顔を真っ赤にしてボロボロ涙を流して嬉しそうにした彼女。今でも忘れない記憶。
UGNチルドレンとしての日々は辛くもあった。でも、これ以上誰かが自分たちと同じような理不尽に晒されないようにと思うと、帰りを待つ家族がいると考えると頑張れた。
将来は二人でUGNで活動しながら、いや活動してなくても、一緒にツーピースバンドをやろうとも話した。令美がギターでエリザはピアノ…はバンドとしては難しいからキーボード。今までないにあまりない組み合わせだし、姉妹ユニットで、義手でも家族がいなくてもめげずに前を向いて頑張ってて、きっと沢山の人が元気を貰えるようなバンドになるよ、と令美は嬉しそうに語った。

そんな話をした矢先だった。令美が任務にて帰らぬ人となる。
これ以上傷つくことがないだろうことをよく理解した。
その後はピアノに触ることはなくなった。代わりに一層一層UGNエージェントとして、励むようになった。これ以上自分と同じ思いをする誰かが出ないように。立て続けに武力鎮圧に参加しているため、生傷が絶えない。
自分の「これから」も忘れてしまったかのように。

今は強かに毎日を過ごしている。