影に見立てた魔眼を扱い、ウロボロスの異能を部分再現する異能。
魔眼により武器を振るい、重力により散布した霧状物質を操作する。

蛇王の外套の前所持者、感染源の少女が完成させられなかった補助を体現した。

　平凡な出自の平凡な少年である。
　紙から釘まで口にする異食症を患ってはいたものの、両親の理解もあり、病状を抑えながら順風満帆な高校生活を送っていた。
　ある日、嗅いだことのない匂いに誘われ、放置された廃屋に足を踏み入れると、そこには少女が倒れていた。

　自らを"失敗作"だと名乗った彼女の生活を補助する対価として、レネゲイドについての知識を得る。
　他者のレネゲイドを喚起・強化する人員として遺産に適合させられたが、彼女のそれは極狭い範囲にしか影響を及ぼせず、失敗作として処分されそうになった所を逃げ出してきたそうだ。
　とても不条理な話だとは思ったが、だからといって何が出来る訳でもない。
　今日と明日、彼女のライフライン維持に助力する程度が精一杯であった。

　不思議な親交が日常になりかけたある日、廃屋で冷たくなっている少女を見つける。
　追手に見つかり処理されたのかもしれないし、そもそも定期的な調整抜きでは長く保たない身体だったのかもしれない。
　いずれにせよ、当時の喰丸には原因を知る術もなく、ただ別離だけがそこにあった。

　別れを認めたくなかったのか、動転していたのか、最初からそのつもりだったのか。
　自分の気持ちもわからないまま、失敗作ではない、極上の血肉を口にして。少女の運命を引き継いだ。
　
　
　交渉材料にしようと隠してある"遺産"の事は聞いていた。
　確かにそこにあった蛇王の外套であるが、放置するわけにもいかず、裏社会の道具など持て余す。形見は十分持っている。
　彼女の古巣に返却し、その際に本名を聞ければ墓を立てるのもいいだろうと接触を図り、なんとか成し遂げた頃には継承が済んでいた。

　皮肉にも"失敗作"のコンセプトを完成させた仏ノ原喰丸は、その業の深さを見初めた人事部により勧誘を受けることになる。
　
　当人としては『病』を抑えずに済む場が得られるのならば。と、FHマーセナリー登録を快諾。
　それが遺産の副作用によるものか、生来の気性かは不明瞭である。

　覚醒間もなくから世話になっているFHセル"ハッピーエンド”での仕事とし、裏切り者の処分を請け負う。
　潜伏先として言質のセルから借り受けたのはフライドチキン屋。バイトリーダーの百瀬手鞠に教えを受けながら、チキン屋とFHの二重生活が始まった。

　彼女の食に対する姿勢に感銘を受けたり、チキン屋として教示を受けたりしながら、裏切り者を特定。
　処分したはいい物の、それは百瀬の恩人であり、オーヴァードであった彼女は暴走。死体を取り込んで暴れ始める。

　その姿勢込みで自分の理解者になり得ると思ったのも束の間、正気を失う化け物となった事に落胆。討伐。
　出てきた死体は殺したからにはと美味しく頂く事にして、少しセルの結束が深まった事を感じながら帰路についた