事件後暫くして天紗が一時的な休職を申請した為もっぱら支部内で事件の後処理を行っていた。任務中にちょっかいをかけられなくなって静かに集中できると思っていたが静寂に違和感を覚えどうにも仕事が手につかなくなっていた。
天紗との交際は順調な模様。もう支部内のだいたいの人間にばれているし何なら妹にもばれている。天紗が休職した際支部の他メンバー達から「ついにやらかしたか！」「はよ責任取ってもろて」「出産予定日いつですか？」などの誤解を招いた。まだやらかしてはいない、まだ。

紫陽萌奈の抱えていた想い、それに美古見野天紗の自身に対する想いや献身を受けて一つの決意をする。「明日を共に生きていきたい人の為、共に生きることの出来なかった人の為に今を生きる。」
その決意の一つとしてコードネームを変更した。「真祖の伴侶」。大切な人の為になんでもできる、そんな自分になろうと決めたのだ。

ある日の訓練上がり、現在の訓練パートナー兼護衛対象の美古見野天紗から話がしたいと呼び止められた。
支部の外の適当な公園のベンチに腰掛ける。彼女はぽつぽつと語り始めた。
「先輩、私のことを殺してくれませんか？」物騒な話が出てきた。どうにも自分の力とそれが原因で引き起こしてしまったことへの罪悪感や嫌悪感、自責の念が彼女を苛んでいるようだ。
仲間を失ったあの日の自分を見ているようだ、あの時のオレも自分のミスだととてつもない罪悪感に襲われた。そんなオレに投げかけてもらった言葉を思い出しながら彼女に語りかける。
「確かに一度しでかしてしまったことはもう取り戻せない。けどな美古見野、死んでしまったらそこまでだけどこれから先は変えられる。自分が奪ってしまった命の分も生きてより多くの人を守り幸せにしてやればいいんだ…ってこれは先輩からの受け売りなんだけどな。それに何のためにオレや支部のみんながいると思ってんだ？ただでさえレネゲイドやらオーヴァードやら訳わかんねーもん扱っているんだ。みんなで助けあって、支えあっているんだ。美古見野、当然お前もその一人なんだぜ？つらいこと、わからないことがあったらみんなを頼れよ。」
黙って聞いていた彼女がこちらに顔を向け問いかけてくる。
「じゃあ、…私に生きる意味をください。他の誰でもなくて、先輩から、欲しいです。私が一人前のエージェントになるまで生きてたら、私の願いを叶えてくれますか？」
悩む後輩の力になってやりたい、それにどこか同情にも似た思いがつい言葉を口から出させた。「おう、言ってみな。できる範囲でなんでも聞いてやるよ。」これがやらかしになるとは気づかず。

「私の初体験を、貰ってください。ね？」

…は？この娘はいったい何と言った？初体験てお前。そう男にむかって軽々しく言うもんじゃねーだろ！
とにかく彼女に思い直すよう告げようと向き合った時、彼女の表情に気づく。

希望に縋りたい、見捨てないでほしい、誰かを信じたい。そんな様々な感情を秘めた今にも涙の溢れ出しそうな瞳。

これを見てなお思い直せ、とは言えなかった。
「………ああ、わかったよ、お前が一人前になったらな…。」
とはいえ美古見野はまだオーヴァードに覚醒して日も浅い。一人前になるまで多分それなりに長い月日はかかるだろうしその間にきっと時間が解決してくれるだろう。彼女自身が約束を忘れるとか、恋人ができたとかで。

これが甘い見込みだったとも気づかず。

Ⅴ市支部支部長赤井正則の指示のもと美古見野天紗と共に奪われた遺産の奪還任務に当たるも作戦途中に赤井の策謀により意識を失い天紗と分断される。意識を取り戻した後はⅤ市のFHセルリーダー・長谷川章の協力もあり地下研究所ですやすや眠っていた天紗を救出し、長谷川が赤井を引き留めている間に天紗を連れその場を離脱した。
天紗と対話の中で己の中にあった天紗への感情を自覚し、彼女の向けてくれていた好意をないがしろにしてしまっていた事を謝罪し天紗に対して告白。事件解決後に二人でデートに行く事を改めて約束した。
ジャームと化してしまった長谷川と赤井の二人と交戦し、天紗による最大攻撃の準備の為に彼女を守り通した。
決着後、二人で約束通り海にデートへと赴いた。この後何があったかは二人の秘密。

ある日自分の家に3年前に死んだはずの同僚、紫陽萌奈が現れる。彼女に記憶を操作され彼女が生きていることを疑えなくなってしまい、そこに強襲してきた美古見野天紗と共に何故か3人で湖にデートに行くことになった。その後任務中に萌奈が死んでいることに気づき天紗との記憶を操作されていたこともあり精神的に追い詰められてしまうも天紗の励ましで立ち直り、一人で萌奈との戦いに臨んだ。萌奈に止めを刺し、覚悟はしていたもののやっぱり心にダメージを受けてしまうが天紗のキスと抱擁に慰められた。
首謀者を倒し、入院した病床で天紗との結婚式の夢を見て、夢を現実にする決意をした。