いつ生まれたのかも、何がきっかけかも、なぜ生きているかも理解していない。ただそこにあるだけ、何世紀にも渡り人々の記録で構築されただけの存在。記憶と認識、知恵と理解、不定形で不明瞭なものばかりを集めて肉付けされたレネゲイドビーイング。
己の出自に興味は特段無いが、伝え繋ぐ存在が居ないと薄れてしまうことは自覚があったり無かったり。
生まれたからには生きていたいし、誰にも触れずに消えるのはなんとなくいやだ。なんとなくだぞ。

ただ存在しているだけもつまらないのでふらふら彷徨い歩いていた所、UGNという組織を知る。同時にFHの存在もしるが、他者を傷つけのし上がる様はなんとなく気に食わなかった。
現状不満はないので大人しく任務にだって従うし一応雑用だってする。人の子のためになるならヨシ！
見た目や言動こそヴィランじみたものであり、世間一般で描かれる魔女や魔法使いであるものの、中身はどちらかというと白魔女寄りである。見かけ騙しPart2。

ヘカテーとアイエーテースの間に産まれた魔女キルケー、それが彼女の核である。
膨大な知識と技術、獣を従える力を「領域の王」を冠するオルクス、「万能の天才」を冠するノイマン、そして彼彼女ら「魔術師」の最期に相応しい火刑を辿った「熱と冷気の支配者」を冠するサラマンダーのトライブリードとして生まれ落ちる。
キルケーにとって動物を従えることも、他者を堕落させることも造作もない。乳飲み子に乳を与えるが如く愛を撒き、飽いて棄てるだけの不真面目な愛の女神を宿し、ひとつふたつと気に入りの玩具を作っては気の済む手元に置いて過ごす。
しかし、全てが全てキルケーをなぞる訳では無い。
「魔女」の概念であるからこそ、他者を純粋に愛し癒す面も持ち合わせている。
ただひとり、いっぴきの猫を拾ったことから意識の変化が訪れることもある。興味と好奇心が沸き立ち、ただ1人の存在として触れ合うようになることもある。
故に、今ある少女の姿は｜魔女キルケー《秘薬を使う魔女》としてではなく、｜黎亜キルカ《ただの保護者》として存在したいという意志の表れである。