容姿・経歴・その他メモ

生と死は紙一重。佐野はそう考えている。
幼いころ、父は母を殺めた。今思えばきっとあれはジャームだったのだろう。
驚くほど簡単に佐野の日常は崩れ去った。

少し時は進んで。佐野はUGNでエージェントとして働き始めた。どのような経緯で働き始めたかはあまり覚えていない。もしかしたら父親と関係があるのかもしれないが、あまり覚えていない。
佐野には仲間がいた。苦楽を共にし、ともに成長していく仲間がいた。今はもういない。なぜいなくなってしまったのだろうか。覚えているのは仲間に押されて転んでけがをしたこと。誰に突き飛ばされたのだったか。
佐野は何も覚えていない。

佐野の人生には常に死が付きまとっていた。母が死に、父が死に。仲間が大勢死んだ。
何もかもを失ったはずの佐野の中には、「生きる」ことしか残っていなかった。
なぜ生きるのか。死んでいった母のためか、それとも失った父のためか。果たして散っていった友のためか。
生きとし生ける者は、何故生きるのか。人間が生きる理由は何なのか。それはきっと、死んだ後になって初めてわかるのだろう。
死してなお、誰かの中で生き続けているのなら。それはきっと意味があるのだろう。では何も覚えていない佐野のことはいったい誰が覚えているのだろうか。今、この場で生きていることに意味はあるのか。

いや。だからこそきっと意味があるのだろう。すべてを失った佐野だからこそ、失った者たちが散っていった理由は佐野が作り出すしかない。死にゆく者たちのすべてを背負って、佐野は今ここに立っている。
かつて失った全ての者へ弔いを。佐野がこれから奪う全てに手向けを。
生きる喜びとは、常に死が寄り添うことで初めて成り立つのである。故にこそ汝、死を忘れるなかれ。

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