またあっしの話を聞きたいっていうんですかい？
UGNの運命を左右するような話を！
なーんて、冗談冗談。最近やったゲームのオープニングを真似したかっただけなんだよねー！
えーと、そう睨まないでよ｜雷狼《グローム・ウォールク》。せっかく貴女の武勇伝を語ろうとしてたのにさ。

────ある傭兵と依頼主の会話記録。（依頼主と思しき女性だけが）軽快に話している。

「私は……人間だ。どんな外道でもいい、それでも私は人間でありたい。だって、人に殺されたのならまだ恨めるじゃないか」

｜有明亜狼《ありあけあろう》は、[最重要機密]から保護された被験体であり、特殊装甲義肢「ティンダーラ」唯一の適合者、ダークウェブを利用するフリーの傭兵、そしてUGNのエージェントです。
彼女のことを知る人は口々に複数の名で呼びますが、もし一つに絞れと言われたら皆同じ通り名を選ぶでしょう。
“｜雷狼《グローム・ウォールク》”、と。

日本人女性としてはすらりと高い身長、おびただしい顔の傷とそれを隠す眼帯に目が行くのは、あくまでも平時のみ。
戦いとなれば、機械と肉、雷が混じり肥大化したその腕に誰もが目を奪われるのですから。

彼女の持つシンドロームはブラックドッグとキュマイラ。
機械の腕と獣の腕を両立している事こそが彼女の異常性であり、また特殊装甲義肢「ティンダーラ」を用いて[最重要機密]が成し得たかったこと、その最高到達点です。
衝動によって人を殺す悟性なき殺人鬼、命令によって人を殺す理性なき機械、本能によって人を殺す知性なき獣。
齎される結果は何一つ変わらないのですから、全ての狂気を内包している方が強くなるとは思いませんか？