彼女は、警察官の両親と歳の離れた妹、ユリアナを持った、優秀な子どもだった。
両親は仕事で忙しく、よく家を空けていた為に彼女達姉妹の面倒は祖母が見ていた。それが少し寂しかったけど、それでも彼女は幸せだった。

その日は、雪の降るクリスマスだった。
久しぶりに両親も休みを取れて、一家団欒を楽しんでいたその日、彼女は全てを奪われた。
祖母お手製のクリスマスケーキも、母が焼いたローストチキンも、父と妹と一緒に飾り付けをしたクリスマスツリーも、全てが炎の内に消えた。

行かなければよかった、と後悔している。
ユリアナが好きなジュースを切らしていて、それに気づいて買いに行ってしまった。
沢山あった方がいいだろうと思って、大きいサイズのジュースを2本もカゴに入れてしまった。
それが重たくて、ゆっくりゆっくり帰ってしまった。
その最中に、家族は皆殺しにされていた。

帰って来た私を見て、奴は笑った。帰って来なけりゃ死なずにすんだのに、運が悪いなと笑っていた。
私は何も出来なかった。悲鳴を上げるでもなく、泣き叫ぶ訳でも抵抗するでもなく、ただ呆然と目の前の状況を見ているしか出来なかった。
ただ、燃える炎が赤くて、紅くて、黒くて、それで何もわからなくなって……………
気づいたら、UGNに保護されていた。

後から聞いた話だが、父は咄嗟に銃に手を伸ばし、母はリリーを庇うように抱き、おばあちゃんは2人を隠すように前に立っていた形で死んでいたらしい。

だから、復讐を遂げる日まで、彼女は生き続ける。