FH時代

幼少期にFHに拾われ育った。
それ以前の記憶はないが、あるエージェントに「お前は家族を殺した化物だ」と言われたことがある。
真偽はわからない。彼も確認しようと思わなかった。
自分の過去がこれっぽっちも気にならなかったし、たしかにそこは化物の巣窟だったので、自分も同じ穴の狢なのだろうと早々に諦めがついた。

それからはFHチルドレンとして仕事を全うした。
人を殺す。
時には敵を、時には仲間を。何の力も持たない一般人でも同じこと。
自分の体を燃やす化物はどうやら心まで燃やし尽くしてしまったのか。
彼の心はなにも感じない。

なにも感じないはずだったが、ある時、怪我をした彼を心配した者がいた。
一般人の、とても仲の良い親子だった。
一度手当をしたばかりではなく、彼を見かけるたびに心配し、時に食べ物を押し付け、時にその温かい家の中へと招き入れた。
親子がなにを考えているのか、彼にはわからなかった。
けれど彼にとってその場所は、不思議と悪いものではなかった。

しかしそれもいっときの間。所詮はオーヴァードと人間。
オーヴァードの能力を子供に見られ、先程までの人懐っこい笑顔を浮かべていた子供に「化物」と罵られた。
その豹変ぶりにカッとなったのか、傷付いたのか、その小さい体に手を挙げてしまった。
気付いたときに目の前にあったのは、親子の死体。母親に庇われた子供ごと、その手は殺してしまっていた。

静まり返った家の中で、彼は慟哭する。
皮肉にも大切なものを壊したことで、彼は自分にも感情があると知った。
そして化物は、やり直しを願った。
燃えさしの中でわずかに燻っていた火が、彼をFHから飛び出すことを決意させた。

UGNエージェントとして

今でこそ面倒見のいいゆるいおにいさんが板についているが、たゆまぬ人間観察の結果である。
お節介は気に入られたいという打算ゆえ。度が過ぎ距離感を間違えることもしばしば。
教会でPC1に出会い、彼の様子を見に行くうちに打ち解けた。あのとき殺した家族と重ねているのかもしれない。今では毎朝弁当を作り届けている。
周りの人間を騙しているという罪悪感は常にある。もうあんなことに手を染めたくないと逃げて来たのはいいが、あれだけ命を奪った自分が、幸福を望むことなど許されるわけがない。
なのにどうして自分はここにいるのか、彼自身にもわからない。
また、裏切ったFH時代の仲間に対しても今では罪悪感を抱いている。

啓明の枷鎖はUGNのCN。啓明（明るい星）って聞こえはいいけどアンタ（ἀντι）は接頭語で「反～」。元UGNの敵対組織ですよ～。枷鎖はデバフができるから相手の行動を蝕む意味と見せかけて、こいつ罪人ですよ～という。
FH時代は「渇求の虚星(デザイア)」　de（反） ster(星を表す）　ないものねだり。