ナチス残党組織"黒陽の塔"教団、その幹部の家に生まれ、その下に数人の兄弟姉妹がいた。
　生まれつきに高いオーヴァード能力が発見されたことから教団の次代教主候補として目つけられていたが、教団内部の人身売買に巻き込まれて売り飛ばされかけたところUGNに救助された。
　事件当時はまだ10歳未満の少女であるため、事情の特殊性から身元を送り返すわけにもいかずそのままUGNで身柄を引き取ることになり、チルドレンとして育ちあげた。
　当時彼女の処遇について大きく関わっていたのが現在の日本支部長霧谷雄吾で、そのことから強烈な忠誠心を抱くことになり、霧谷の依頼であれば躊躇いなく引き受け、立ちふさがる敵すべて薙ぎ倒す。
　余談だが、彼女が行方不明になったあと教主の座は妹のひとりが引き継いだらしい。グレーテルは現在でも、兄弟姉妹たちの情報を密かに探っている。

　ミカエルからソロモン王に授かったと言われる指輪、様々な悪霊を使役する権威を与えると伝えられている。
　彼女の所持している指輪は厳密にいえば原本(オリジナル)ではなく、教団の持つ遺産から作られた写本(コピー)である。
　写本であるため限定的な権能しか持たず、彼女に与えられたのは悪魔"アスタロト"を使役する権威である。
　伝承上の地母神"アシュトレト"と同一視とされる悪魔であるため、契約者に豊穣をもたらし、命を栄えらせる権能を授ける。
　しかし、それは決して生命を謳歌する讃美歌ではない。
　死と創生の循環を狂わせる、"災厄"なり。


　彼女のハヌマーン能力を媒介に行使されるアスタロトの権能は、表としてこの世のものと思えないほど美しい音楽という形で表われる。
　それを聞く生物は最初、活力の向上や、古傷の治癒などが見られるが、レネゲイド作用の進行に連れて身体状況が悪化し、体細胞と体内細菌の増殖と成長が完全に狂い、最終的に体全体真菌や植被に覆われて死に至る。
　また、このように死亡した生物は増殖した真菌により体組織完全に消化されるため遺体は残されない。