UGN発足初期頃に起きたジャーム被害で保護を受けている。
その事件に巻き込まれた一家の両親は死亡、からくも生き延びた幼い姉妹は両者ともオーヴァードに覚醒。
その治療と制御のためUGNチルドレンとして育てられることになったが
当時は今に比べレネゲイド技術が育っておらず、またコンプラが行き届いていなかったため
実験じみた治療を受けることになってしまった。
妹の河は特に問題なく傷が癒えるだけで済んだのだが、海は｜治療《じっけん》と相性が良すぎたらしく
多少のレネゲイドの不安定化と引き換えに、心身が治療の範囲を超えて過剰に強化された。
(数年後に事態が明るみになると当然のように問題視された)

そんなこんなで治療も終わり強化された海は、訓練を受けて最前線で働くことを望んだ。
これは、妹が覚醒の影響で虚弱になってしまいUGNに頼らねばやっていけない状況になってしまったことから
危険な労働の対価として、UGNから優先的に便宜を図ってもらおうと考えたからである。
人手不足のUGNと利害が一致し、海は19歳までチルドレンとして激戦を重ね、そして生き残り続けた。

転機が訪れたのは20歳のころ。
「UGNチルドレンが社会に復帰し、適応するためのモデルケースが必要なのではないか」との声が一部から上がっていた。
生まれや育ち、そしてレネゲイドのせいで精神的に不安定な事例が散見されるUGNチルドレン。
共存の理念の礎を作るべく、チルドレンたちを社会へ────。
そんなフレーズと共に(現実的な問題で規模は小さいものの)推し進められた事業。
対象として白羽の矢が立ったのが、ちょうどチルドレンの年齢を終え、精神的に安定していた海だった。

海本人は当初、妹のためにUGNから離れる気はなかったが、UGNの面子にかけた交渉の結果
社会復帰プログラムを進めながらもUGNの仕事をある程度優先して受ける────つまりイリーガルとして働いてくれるなら
妹くんへの便宜は現在と変わらず続けるとの条件で了承。

その後数年間、日常と戦場を駆け抜け続け
N市に事務所と生活拠点を持ち、UGNとパイプがある何でも屋「万事屋さざなみ」として存在を確立したのだった。