矢島湊は女でありまた一般人であった。
ある日レネゲイド事件に巻き込まれ家族全員を失い、自身も足が動かなくなった
リハビリを頑張って足を治しても、帰る場所が無い。リハビリをしながらもそう心の底で思っていた彼女を変えたのは1人の少年であった。
名前はつばめ、そうとしか聞いていない。
なぜ来てくれるのか、そういうことも知らずに彼と話しているうちに生きる気力が生まれた。
外に出たい、彼と一緒に生きていたい。
これは依存であった、間違いなく。それでも彼女にとってはかけがえのない、大切な思いであった。
しかし、人というのは仲良くなるほど遠慮がなくなるもの、彼女は彼にお願いをするようになった。
そのお願いというのも｢あのケーキを食べたいって言ってる子がいるの、買ってきてくれない？｣というものや、｢あの人が困っているみたいだから助けてあげて。｣というものではあるが。
自身の欲望ではなく他者の心配をする、それが彼女の美徳であった。色彩の勇者となった際の童話が｢幸福な王子様｣であったのもこのせいであろう。
そして彼、つばめはそれを全て叶えて見せた。だから気づかなかった。彼がかなり疲弊していることに。
そう、彼は｢UGNエージェント｣であった。全てを失ったレネゲイド事件を担当していた。
つまり彼にとっては罪滅ぼしであった。それを知らなかった。だから悲劇は起きた。

｢彼が死んだ。｣
その言葉を彼の相棒だった人が言った、その時。
彼女の心は完全に壊れた。
そのときに心を食らうものに食われそしてにじのくじらに、唯鈴に守られ月虹町での生活が始まった。

と、いう記憶を思い出した湊であったが、性別の違いからか、あるいは｢幸福な王子様｣の体現であるが故に性格が少し違ったためか、現実の湊(以下ミナト)と同一人物であることを自覚できなかった。
しかし周りの様子からこれを真実であると定義し、あまり混乱することなくその場を収めた。
が、溺愛していた妹たちが本当は妹ではないと、その本人である翼(pc2)から拒絶をされた時にはっきりと自覚し、どう声をかけようかと迷ってしまった。
いつもの様に言っても翼を苦しめるだけだと、一人にさせて立ち直るのを待つことにした。
次の日、いつもの日常を暮らしたが周りからは｢妹が休み｣であることに暴走していない湊に珍しいとまで言われた。
そこで透(PC3)に心の底、湊の根源｢理想を体現する為に仮面をつけている｣ということを見透かされる。
兄として、生徒会長として。湊はその役割の理想の為にずっと仮面をつけて、｢本当の自分｣を出していないと。｢本当の自分｣で翼と向き合うべきだと。そう言われた。
あとついでにつばめの相棒であることをカミングアウトされた。
ミナトは悲しみから顔を覚えていなかったらしい。

夕飯、翼は帰ってきた。曰くほかの色彩の勇者に励まされたのだと。
そして、つばめを殺したのは自分だと、そう、翼は口にする。
動揺は隠しきれなかった。
しかし湊は受け入れた。
｢翼はいま悔いている、償おうとしている。ならば、俺は責めない。許すよ。｣


その後、虚無の女王を倒し現実に戻った湊だが、ミナトと統合せずふたつの人格を持ち合わせることになった。
現実の透と再会し、足を(リハビリしながらリザレクトをして早めに)治した。
そして数年後、にじのくじらの夢の世界に残った翼と再会した。(ちなみに湊の姿だった。)
ミナトは湊ほどとがっていない。また、少しお嬢様口調。一人称は｢わたくし｣もしくは｢わたし｣
戻ってからは他人を助けることに病的な湊の暴走を止める苦労人の立ち位置に。
翼と意気投合した。
ただし根源は同じなため、他人を助けることに躊躇いはなく、自分の価値が下なことには変わりはない。