————佐伯健一が率いるチーム、名を『Asc』。
このチーム名には二つの意味が込められている。

一つ、へびつかい座の英名『アスクレピオス』。他の12星座と並びながら、不吉という理由で居場所を奪われた哀れな星座。しかし、それでも燦然と輝くその様に、『Asc』としての生き様を見出すため。

一つ、『昇順』という意味。順序に沿って進行すること。しかしそれは、世界の秩序に従うということではない。己の信念に沿って、真っ直ぐ生きる。どこまでも、自分の思う道を進むのが、『Asc』のやり方だ。

「……一体、このチームに居るやつの何割が、チーム名の意味理解してんのかね……」
————静雄、と在る日の疑問。

裏社会で生きていた父親は、静雄が小さい時に行方不明となった。中学までは、女手ひとつで静雄を育ててくれた立派な母をもち、貧乏ながらも幸せな家庭で育つ。(母は、危険な父に惹かれただけの一般人だった。)
しかし、高利貸しに借金をしているため生活苦が続き、そのことを原因に学校ではイジメに遭っていた。中学校の卒業式の日、痺れを切らした高利貸しが現れ、金が返せないなら……と、母親を殺害した上で静雄を誘拐して売り飛ばそうとする。
静雄は抵抗し、誤って高利貸しを事故死させてしまった。

母は静雄を庇おうとしたが、静雄は母にありったけの財産を持って逃げるよう指示。静雄も別方向に逃げ、高校入学時まで別の街でほとぼりを冷ました。しかし、同時にいつか警察が自分を捕まえるだろうという諦観も持っていた。
しかしある日静雄は、ニュースで高利貸しが違法金利で捕まっている所を発見する。高利貸しを殺してしまっていたと思っていたが、どうやら幸運にも生き延びたらしい。そうなると、雲隠れする理由はないと考え、静雄はアパートを借り、バイトや半グレ･不良などを中心にカツアゲしながら、家賃や生活費、高校の学費を捻出しつつ母を待つことにした。
しかし、ただでさえ苛烈な環境に身を置きがちだった静雄は、ここ数ヶ月間の間で周囲との『普通』
のズレを感じざるをえなくなってしまい、クラスには馴染めず。せめて目立たないように生活するうち、佐伯健一に『Asc』へと誘われに今に至る。