容姿・経歴・その他メモ

メサイアに通う、ノヴァリスの定義するごく一般的な生徒。
並大抵の銃撃戦に慣れ親しみ、並大抵の珍騒動を傍観者として楽しみ、変わり続けるノヴァリスに並大抵の不安を抱く、ごくごく普通の一般生徒――というのは、表の姿。

アーネスト・オースティンは、かつて、クロドヴァにて名うてのFHマーセナリーとして知られた、生きた伝説であったのだ。

『リエラハザード』を発端とするレネゲイド災害に見舞われるクロドヴァにて先天性オーヴァードとして生まれたアーネストは、親の顔を知るよりも早く親に売りさばかれた。
買い手はファルスハーツ――クロドヴァ支部長、フランソワーズ・ルベ―クである。
彼女が何を思ってアーネストに人間としての名を与えたのかは定かではない。彼女のプランは深淵であり、人類の思考の及ぶところではないのだ。
ともあれ、人間としての名前を手に入れたアーネストに与えられたのは、ひたすらに過酷な戦場である。
実質的なFHチルドレンとしての地獄を味わいながら力を手にした次は、ノインテータ―の児童兵として人類の生み出す邪悪の大半を目の当たりにするさらなる地獄。
そこで、アーネストが人間の尊厳を喪失しなかったのは、いつかこの地獄から抜け出した先に、人間らしい人生を『買う』ことを夢見ていたからである。

そして、3年前に、不朽の名声を得たころのアーネストは決断した。
ノインテータ―としての傭兵の報酬、FHから与えられる極秘任務の遂行報酬。長きに渡って稼ぎ続けた全てを、フランソワーズに突き付け――自分を殺すか自分に人間の人生を売り渡すかの選択を迫った。
彼女はこう答えた。「私が考えていたより遅かったですね」
そこからの記憶は、アーネストは一部消えている。
気付いたときには、アーネストはメサイア学区の学生としての席を与えられていた。

そこからの日々は、楽園である。
人が死なない場所だ、殺さなくても金が得られる場所だ、友人が翌日に死体袋に入るか、ジャームにならない場所だ。
行軍歌以外の歌も歌える、好きな音楽も聞ける。ハンバーガーやコーラが贅沢品じゃない。
アーネストが夢にまで見た『日常』が、ここにはあった。ホンモノの戦場に比べれば、メサイアの悪辣さなど十分に許容出来るのだ。
だから、自衛以外にその能力を欠片すら使おうとせず、革命においても暴力を最低限にのみ使い――ただ、この『日常』を満喫している。


アーネストのオーヴァードとしての能力は極めて特異ではあるが、シンプルなものである。
『超血統』に由来する規格外の熱線放射能力を有する武装精製――その武装は――『パワードスーツ』なのだ。
エンジェルハイロウによって構築された『光』でしかないパワードスーツには、一切の防御能力はないが、光でしかない故に不壊であり、あらゆる状況下で精製を可能とする。
――その能力は、フランソワーズが授けた、ベルト型ドーンブリンガー――『アルテミスドライバー』を起動させることによって最大限に発揮される。
ベルトを起動させることによって装着される『光の銃』を纏う時、クロドヴァで多くの兵士に滅びを運んだ『アルテミス・アリエナ』は顕現し、万象を焼く輝きを解き放つのである。

余談では在るが、アルテミス・アリエナはFHとノインテータ―が与えた正式なコードネームであり、アーネストに正規登録されているコードネームでもあるのだが、クロドヴァにおいてはより知られた渾名が存在する。
夜の中にて輝き、閃光と共に死を運ぶもの。
それは、魔を司る月の天使を兵士たちに想起させた――故に、アーネストはこうも呼ばれる。

『ペイルライダー・サリエル』

……この二つ名を、アーネストは嫌っており、名乗ろうともしない。

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