きっかけは中学生になった詠子に"ナルキッソス"が家庭教師として潜り込んだことだった。
彼は成宮と名乗り言葉巧みに彼女を誘惑し、一線を超える。

禁断の関係に凄まじい勢いでのめり込む彼女に成宮は"遺産"を使い彼女をオーヴァードへと覚醒させ、K市における手駒へと作りかえた。
幸運(不運)にも天才(ノイマン)として覚醒してしまった彼女は好成績を残すことで両親に怪しまれることも無く、成宮との関係をより決定的たるものにしたと信じていた。
それからは"ナルキッソス"の尖兵として活動していたが、衝動よりも先に彼女の肉体に以上が生じた。
――傷の治りが遅れている。
超人であり兵士(オーヴァード)であれば治癒に1日もかからないような傷であっても2日3日とかかるようになった彼女に"ナルキッソス"はさらに投薬を試みる。
恐怖する彼女を関係性の破綻をチラつかせることで従わせソラリス能力で生み出した薬品(劇薬)を投与。
治癒能力が回復したことで安堵した彼女だったが、薬品は使用者の肉体を恐ろしい速度で蝕んでいき、彼女は肉体の再生速度の代償として肉体強度そのもの非常に脆くなってしまった。
"ナルキッソス"は当然その事を知っており、彼女を"使い潰す"べくより多くの戦場へと駆り出した。
そうしたある日、遂に"ナルキッソス"がねぐらとしている廃屋にUGNの討伐班が差し向けられることになる。
この時既に"家を捨てていた"彼女はこれに孤軍で応戦。
しかし約束していたはずの増援はいつになっても現れることはなく、3時間にわたる激戦の末に拿捕(保護)されることになる。
治療を受けて知らされた事実は彼女にとって信じ難いものだった。成宮は偽名でありK市に潜伏するにあたって用いられたものだったこと。彼にとって自分は"使い潰しの手駒(都合のいい女)"だったこと、そして――そんな存在は自分だけではなかったこと。

想い人も、戻るべき日常も、普通の身体(得られたはずの幸福)さえも全て失ってしまった彼女は既に空席となっていたFHセルを離脱、以降名前を棄て復讐者として"ナルキッソス(自分を棄てた男)"の行方を追うことを決意した。