土地に沁み込んだ人間の歴史と繁栄とは切り離せない、ありとあらゆる「恋愛」。それが縁結びの神社にて、ヒトのカタチでレネゲイドビーイング化したのが藍月すみれの正体。遥か昔に、この神社へ縁結びを願った乙女の姿を模している。

　昼間は善なる神として人々の愛を結び、見守り。
　夜は悪なる神として人々の愛の苦みと甘さを、（彼女が望む望まずに関わらず神の習性として）飲み干し喰らう。

　自分もいつか、ありのままの自分で恋をしてみたいと思いながらも、「ヒトが種の存続のために用いたシステム-恋愛-」から生まれた概念のために、ヒトへ恋焦がれながら、ヒトと恋ができないでいる。
　男たちが彼女の作ったお酒を飲むと恋慕を抱くのは、神である寵愛を自作のカクテルという形で成立させてしまっているため。神からの賜りものに、非オーヴァードが陶酔するのは仕方のない事だ。


　「じゃあ、神と神で恋愛をしろっていうの？」
　「国生みの時代はもう過ぎたのよ。胸がときめくことはないわ」

　「オーヴァード？ そうねぇ……」
　「本気で私を愛してくれるなら、一度ぐらいは恋に酔って、飲み干して喉を焼いてもいいかもね？」
　「フフフッ、臆病なのは普通でしょ？ 初恋になるんだもの。ね？」