子狼は嘗て、雪と言う名のレネゲイドビーイングの元で平和に暮らしていた。
しかし、穏やかで幸せな生活はマルドゥークと呼ばれる組織によって燃え尽きる。

子狼は望んだ、彼の者達への復讐を。
しかし、平和に過ごしてきた彼には足り無い物が余りにも多すぎた。
修練が、経験が、力が。
在るのは己の身体と幸いにして存在する素質のみ。

…故に、彼は己に或る物を以てソレを補った。


足りない練度は己の身体を犠牲にする事で補った。全身を兵器に変え、戦うモノと成る事で。
足りない経験は身の安全を捨てる事で補った。経験を積む為に戦火に身を宿し、脳を弄り思考を電子に預ける事で。
足りない力は人間性を捨てる事で補った。身体理論を無視した力を用い、骨が折れれば氷柱で肉を貫き補い、肉裂け血が溢れればその血を固め肉を埋めた。

復讐相手の情報、己を兵器とする為の資本、そして嘗ての家族と同じレネゲイドビーイングを護る事。
全てが果たせるゼノスに所属し、狂った様に吠え戦う。




戦いを続け、敵を殺す度に足りなかったモノは埋まっていく。
しかし、喪ったモノが埋まる事は無く。
要たる首謀者の尾すら見えず。


故に。未だ彼は戦いを続ける。
月に狂う獣が如く。

人への復讐か。
人外を護る為か。

月の下、狂い吠える孤狼は何を想い戦うのだろうか。

巨大な剣と身体中に搭載された兵器群、そして凍った炎を用いる。
幾度もの戦闘を経て、これだけでも一定の戦闘力を保有するに至るがこれ等を十全以上に発揮した時が彼の真価。
狂い孤狼、狂戦士と呼ばれる所以である。

凍った炎が身体と兵器を包み、その姿は狼の形を形成する。
その状態では、どの様な損傷を受けても勢いが衰える事は無く。
巨剣や兵器群は例え回避を試みたとしても、時には生物には不可能な挙動を描く為避ける事が叶わない。

敵対者と目撃者からすれば、倒す術の無い怪物に見えてもおかしくは無いだろう。
実態はその様な物では無いとは言え…だ。

コードネームは”｜狂い孤狼《クルイコロウ》“、” ｜狂戦士《ベルセルク》“
どの様な損傷を受けても全く怯む事無く、敵対者を殺す迄止まる事なく戦い続ける様。
また、その際に身体と武装を覆う凍った炎が狼を模る事と基本的には1人で戦う事から。

月気の用いる戦闘補助システム。

コンセプトは

戦闘技術と呼ばれる物は極論を言えば敵へ攻撃を当て、敵の攻撃を無力化する為の物である。
故に、例えソレがどれ程未熟な者でも己の攻撃を当て、敵の攻撃を無力化出来るのであれば練度の差は無に等しい。

と言うもの。

このシステムは使用者の脳の一部を改造し、例えどの様な状況であれ（物理的に不可能な状況でなければ）敵に攻撃を当てる事を可能とする。使用者の身体が曲がらぬ方向へ曲がり、千切れるとしても。

また、使用者がどの様な負傷をしても痛みを感じる事は無く戦闘続行を可能とする。
戦闘のパフォーマンスが落ちず、死ぬ事さえ無ければ文字通り敵の攻撃は無効となると言う思想からである。

とは言え、ダメージが無くなる訳では無い事や攻撃を当てる為にも身体に負荷をかける為、長期の運用は不可能である点。
誰でも使用可能と言う訳ではなく、脳の容量に余裕がありこれ等の処理が可能なノイマンにのみ使用可能である点。
以上の理由から、継続使用は命にも関わる文字通り諸刃の剣であり…一部の組織が新兵を死兵として扱った例を除き使用例は無い。

ノイマンは戦闘以外にも活躍の場が多い事もあり、欠陥品と呼ばざるを得ない代物だろう。

未熟な身体と技術を補う為に月気が纏うモノ。
身体の各所に搭載された兵器群、凍った炎で補強され肥大化したソレは彼のコードネームでもある狼の姿を自然と模している。
上述した戦闘システムも正確にはコレの一部と言っても過言では無い。

単純な装甲や武装の意味合いもあるが、負傷した際の補助の役割も果たしており。
骨が折れた際は肉を貫き骨に食い込み折れた骨の代替となり。
切断や出血、部位欠損等の場合は氷で埋める事で戦闘続行を可能にする。

しかし、氷を模っているがその実態は炎であり敵対者も焼くが纏う自身も焼く事となる。
纏っている間も肉は焼け、負傷補助の際も追い打ちの如く傷口を焼き続ける。

戦闘中は痛みを感じる機能が停止しておりソレでも（死なない限りは）問題は無いが、戦闘後に負傷を治す際にはそう言った機能は一度停止しなければならない。
おそらく地獄の苦しみであると思われる。