《保護記録：079》
レネゲイドの暴走によって家族を殺傷してしまったチルドレンを保護した。……どうやら、双子のどちらが亡くなったのか理解できないまま双方の認識が曖昧になっているようだ。早急にレネゲイドの力を抑える方法を教えると共に自己の喪失を抑える対応をする必要があると提言する。

……なんだあの力は！？馬鹿力にも程があるだろう！？……全く、支部の修繕費に苦心することになったがそれはまあいい。しかしこれほどの力を秘めていたとは……誤算だった。だがまあ……しっかり愛情をもって接していけばあの子もそれに応えてくれるだろう。……最初はあの子達も警戒していたが、最近は私にも心を開いてくれているようだ。……ふふ、また愛しい子供たちが増えてしまうな。そうだな。ファフも、ニールも、私の新たな”家族”として迎え入れよう。


《保護記録：127》
■■市の上空に現れたレネゲイドビーイングの保護の後任を頼まれた。どうにもこのレネゲイドビーイングは前任者に対して非常に強い愛着を示しているようだ。しかし前任者が行方不明になってしまった以上はこちらで制御する必要がある。彼女の言動は人類の幼年期のそれに酷似している。適切な教育を施せばUGNにとって有益な存在になり得ると提言します。

事前に用意されていた引き継ぎ資料によってかなり助けられているが……本当に”視る”だけで死に至らしめるほどの力があるとは……。主水もとんでもない子を残していったものだ。……だが、あの子は主水の教えを忠実に守っているようだ。…………何故主水は彼女を置いて行ったのか……邂逅することがあれば問い質さねばなるまい。主水程ではないまでも、私も彼女の拠り所になれるよう努める必要があるな。また主水の元で生活できるのならばそれが最善ではあるが、それが叶わないのならば…………せめてこの支部が彼女にとって”帰るべき家”であるように、私も努めるとしよう。


全く。私はどうにもこういった存在と切っても切り離せない関係にあるようだ。まあ……この子達の幸せそうな顔を見られるだけでも尽力する価値があると思えるのだが。それに、最近覚醒したばかりのあの子。鳳仙が抱いている悔悟は確かに不安定な精神状態に繋がり得るものの、同時に彼女の強みにもなっている。私は、あの子が過去の事象に対してまた向き合えるように協力を惜しまないつもりだ。いつかまたあの子が純粋な笑顔で日の下に出られるように……。そのためならば私は、いかなる努力も惜しまないつもりだ。今回の事件も、随分彼女の世話になったしな。礼をせねば私の信念に反する。……あの子は強い。だからこそあまり過度な干渉はかえって悪影響になるかもしれない。だから、ふとした時に傍に寄り添えるような、そんな存在であろうと思う。

今回の事件を経て、特にナハトには大きな影響があったようだ。無理もない。だが……私の想定していたよりも彼女は強いようだ。彼の死去を糧にまた彼女は成長しようとしている。本来であればこのような形で”死”というものを教えたくはなかったのだが……運命とはやはり酷なものであるな。それでも、それを理解したうえで彼女は活動している。……今度彼女の好物を買い与えるのも手かもしれないな。
私は彼女を過小評価していたのかもしれないな。このような事象があっては心が折れてしまうかと思っていたが、それでも心を強く持ち、悲しみに抗っている。ならば私はその気持ちに可能な限り寄り添うまでだ。叶うのならば、彼が望んだように、ナハトが光の下で普通の生活を送れるように……。きっと彼女ならば成し遂げられるだろう。私もそんな彼女を可能な限り応援するつもりだ。

そしてファフとニール。便宜上二人と扱うが、あの二人にも大きな変化があったようだ。主水の在り方とナハト、そしてアイリの境遇に色々と思うところがあったようだ。無理もない。あの事件は家族の……その在り方について疑問を投げかけるものだった。そして”死”についてあまり理解していない二人にも”死”という概念を再認識させることになった。私としてはやはり苦しいものを教えたくはないが、彼女らを預かった”保護者”として、きっとそれを教えるのも私の責務なのだろう。全く……こればかりはいくら経験しても嫌になってしまう。
だが、彼女らはやはり強い。きっと彼女らならばいずれは……。すぐには難しくとも、少しずつ教えていくつもりだ。彼女たちならば乗り越えられる。そんな確信があるのだ。