もう疲れた！
長い間戦ってきたけど、自分だけ生き残ってばかり。仲間は一体何人死んだ？
傷だって残るし、別に痛覚だって全くない訳じゃない。痛いよ。感じていないようにごまかしているだけ。笑顔を浮かべていれば大体の人はごまかされる。
そのうち自分の感情すら分からなくなってくる。
何のために戦っているのか？　世界の秩序維持のため？　死んでいった仲間のため？　死にたくないから？
何にしたって、どうでもいい。自分はもうただ立って戦うだけの、心が死んで摩耗しきった案山子でしかないのだから。

痛い、痛い、痛い――まだ此処に居たいよ、クソッタレが。

別になんてことはない。他人から見たら、ごく普通の出来事だ。
ウチは今でいう共働きの家庭で、休日も家にいることが多かった。よくてショッピングモールに行ったり、近場の店に外食に行くくらいだ。
不満があった訳でもなく、寂しいと思ったこともない。子どもにとっちゃ親と一緒に出かけるだけで充分だし、今となっては懐かしい思い出だ。
ただ、そんな家族が急に「海に行こう」と言い出したら、一大イベントになるというだけ。
片方だけじゃなく、父親も母親も揃って遠出する。それも海なんて行ったことのない場所に。そんなことがあれば心が浮き立つのも当然というもの。
だからとても楽しかった、楽しかったんだ。
いつものように過ごしていれば。海なんて滅多に行かない場所に行きさえしなければ。
きっと今頃、僕たち家族は世界の真実なんて知らず、普通に生きていただろうに――