朧げな記憶が脳に焼き付く。“僕”には妹がいて、支部長の指示に従って任務に当たって、何より大切な友達がいて。
辛い過去もあったけどもこの日常を大切にしていかなきゃ………。


眼が覚める。僕は液体が満ちた培養槽の中に漂っていた。ガラス越しに白衣を着た研究者たちの声が聞こえる。
『被検体のシンドロームはブラックドッグとモルフェウスのようです、実験は失敗しました。』
『遺伝子情報も書き換え、「彼」と同じものにしたはずだがこうも上手くいかないものか。』
『僅かながらに「彼」から引き継いだ部分もあるようですが実験に必要な要素は備えていないでしょう。唯一残った被検体でしたがデータ収集の後処分し次の実験に取り掛かりましょう。』

どうやら僕は“僕”ではない失敗作らしい。そしてこの僕はもうすぐ処分されるようだ、声を出そうにも呼吸装置が取り付けられているから何も喋れない。
こんな事なら目を覚ますんじゃなかった。夢の中でなら“僕”のままでいられたのに。


そう思いながら培養槽の外を眺めていたら肩に梟を乗せた金髪の少女が何人かの人間を引き連れて実験室に入ってきた。


「あなたたち、今すぐこの実験は中止しなさい！このような事、UGNの理念から外れているわ！」
研究者たちがどよめき慌ててふためき出す。抗議の声を上げる研究者もいたが少女の周りにいた人たちによって連行されていった。

顔をしかめながら資料を眺めていた彼女が沈痛な面持ちで培養槽越しの僕に話しかける。
「ごめんなさい、もっと早くこの実験に気づいて止めるべきだったわ…。」
そう彼女は僕に謝罪の言葉を述べる。
「せめてあなただけでも自由に生きてほしいわ…。私もできる限りの支援はするわ、誰にも縛られずに自分の人生を歩んで……。」


僕の、自分の人生って何だろう。

星廻町で一人チルドレンとして変わらない日々をつまらなく思っていたある日、海岸でワーディングを感知し現場に向かい打ち上げられていた土岐樹と神崎津軽を発見する。駆けつけてきた二堂琉人や水間出夕波らと共に樹たちの救助にあたる。
オーヴァードに覚醒した樹にレネゲイドやオーヴァードの事を琉人と共に教えた。
途中、津軽からの視線に奇妙なものを覚え、樹にもその事を突っ込まれながら二人同じ部屋で過ごし、初めて孤独でない夜を過ごした。
暴走した魚類を他メンバーと共に倒し、行方不明になった少女を捜索する際に津軽の内にいた海のレネゲイドビーイングが能力を行使しメンバー達に協力を申請、江に名前を付けるようお願いされ、“美波”と命名した。
事件を解決したら美波と共に過ごす約束を交わした。
連れ去られた野々市支部長を追い、他メンバー達と海岸に向かい、津軽にそっくりなトワイライトと対峙。これを撃破し、支部長とトワイライトの人命救助に協力した。
その後、神崎と共に連れ去られ、島内に監禁され救助を待つ事になる。

神崎津軽と共に拉致されるも二堂五泉に助けられ支部のメンバー達と合流し、リベンジャーの目論見を打ち砕く為に協力して作戦を行なうことになった。ジェットスキーに土岐樹と共に搭乗し樹をリベンジャーのところに送り届け、津軽の救出に尽力した。
リベンジャーとトワイライトとの決戦では樹に対する攻撃を無力化し彼の攻撃の手助けをした。
決着後、美波が賢者の石となってしまう事に拒絶の意志を見せるも彼の想いが美波を涙のレネゲイドビーイングに転生させた。
樹が帰る選択をしたことには笑顔で彼の選択を祝福した。