学校では誰一人として見向きもしてくれなくなったし、家に帰っても親身になってくれる人はいないし、なので、なけなしの小遣いを持って出かけた。適当な電車に乗って適当に乗り換えて、全く知らない駅で降りた。知らない街で当てもなく1日中歩き回った。道を行き交う光が綺麗だったのでなんとなくそちらへ向かって歩いて行った──そこまではうっすら覚えている。
　気が付いたら病院で、知らない男の人が傍にいた。見覚えもへったくれも無い。なのにその人は自分が生きていることをひどく喜んでいた。正直キモかった。帰りたいって思ったけど、帰りたい場所が無いとも思った。その時初めてどうしようって思ったけど、そしたらその人が、俺んち来るか、って。ちょっと怖かったけど、あの場所に帰るよりは、少し、マシ、な気がした。