【生誕～FH加入】
早くに両親が亡くなり、少女は物心ついた頃から親戚に預けられていた。しかし、親戚は金目当てで少女を引き取り、ほとんど放置される毎日だった。むしろ、存在を認めてもらえることなんてなかった。名前も「テメェ」「コイツ」と呼ばれて育った。精神的なストレスからなのか、それとも一度も呼ばれたことがなかったのか…結局今も自分の名前を思い出せていない。
7歳。レネゲイト感染者と見出された少女をFHのスカウトマンが買い取る。この時、戸籍も死亡扱いとなった。
以降、FHのチルドレン候補生として勉学を積む。

【チルドレン候補生時代】
少女はは感染しているとはいえ、覚醒はしていなかったためチルドレン候補生――少なくともセル『バッカス』では「オーヴァードへの覚醒は第二次性徴期（＝思春期）の強いストレスを受けた少年少女たちが覚醒しやすい」と考えられ、12歳までの未覚醒者をチルドレン候補生として教育する――として育てられた。
勉強や身体科目などのプログラムは厳しかったが、それでも彼女にとっては嬉しかった。『結果が出せれば褒めてもらえた、認めてもらえた』。育て親に無価値同然との扱いを受けていた少女は『自分の価値を勝ち取る』と自分の欲望を育てていｔったのだった。
そうやって勉学を積む日々を送るうちに親友ができた。チルドレン候補生は仲を深めることを禁止されていたから、こっそりと友情を深めていった。不思議なことに二人の親友でありライバルでもある関係はバレることがなく、罰されることがなかった。親愛の証として名前を送り合った。自分は『X-Y-Z』と付けてもらい、彼女には『マルガリータ』と名前を付けた。「『バッカス』セルだからカクテルのカッコいい名前を付け合おうぜ」というノリだった。特に、『マルガリータ』に「ズー」と呼ばれることが嬉しかった。今でも彼女の一番大切な宝物だ。
ズーは負けず嫌いだったが、『マルガリータ』も同じくらい負けず嫌いな性格だった。勉強でも身体科目、勉学ともに成績一位であり、『X-Y-Z』はどちらも成績二位だった。「いつの日か倒してやる。倒してオレの方が強いと認めさせてやる！！」と意気込んでいたのだった。

【チルドレン候補生卒業試験】
結論から書くと『マルガリータ』は死に、残ったズーが覚醒した。そしてこの世代のチルドレン候補生卒業生はズーのみだった。詳しく書きたくとも、この世代の卒業試験は音声データ・映像データが共に欠損しているので試験中何があったのか確認することは出来ないのだった。そして、残ったズーが中の様子を一度も語ったことはない。
チルドレン候補生卒業試験とは密室内でチルドレン候補生たちに蠱毒のような殺し合いをさせ、数日後残ったチルドレン候補生を全て「卒業生」として認めるものだ。チルドレン候補生育成として最後のプログラムであり、チルドレンとしての最初の訓練を兼ねているのである。そして覚醒する確率を深めるために、わざとチルドレン候補生が仲を深めるのを見逃していたのだった。すべては覚醒する確率を高め、強力なチルドレンを生み出すためだった。
一つだけわかっているのはズーがこう語ったことだ。「ハッ、他のヤツらは皆殺し！残ったオレは成功例って訳だなァ！」――勝ち誇るような口調は彼女らしかったと言う。これを聞いた教官たちはこれからの門出に期待した。…ただ、教官たちは彼女が勝ち誇ったような笑みを浮かべながら泣いているワケを理解できなかった。何を思ったのかは彼女だけの秘密だが、おそらく・・・・・・
最後に、彼女はチルドレン候補生から卒業した際にもらったCN『Pile Period(終止符)』よりも『マルガリータ』からもらった名前『X-Y-Z(ズー)』を積極的に名乗ると特筆しておく。

【シルバーブレッド所属】
射撃エージェントのみが所属する『シルバーブレッド』セルに移転する。
彼女の杭を打ち込むような戦闘スタイルがセルリーダーの目に留まり、勧誘されたのだった。
吸血鬼は不死の存在だが、心臓に杭を打ち込むことでその命を散らす。何度も生き返るオーヴァードたちの心臓に終止符という杭を打ち込め