本名は「イマヌエル・ノイマン」。
　密かにナチスドイツから持ち出された数多の超技術の中のひとつ──遺伝子操作技術の寵児。
　芸術家の手によって描かれカタログに並んだ中から選定され、遺伝子操作によってあらかじめ与えられた完璧な造形を設計され生み出された、文字どおりの｜芸術家の手による《デザイナーズ》チャイルド。
　思考パターン・能力・性的嗜好すらあらかじめ遺伝子に組み込まれている特別製。

　超技術の再現を目的とした研究者の間に、長持ちする研究対象としての役割を期待されて作為的に生み出された元実験体。
　認識操作により両親への依存心を生まれつき深く深く刷り込まれ、記憶探索すら可能とする強い｜精神操作能力《ソラリス》に拠った｜共感《エンパス》能力の覚醒を目的として、幼少期から過酷な実験の被検体となっていた。

　長じるごと成熟していく能力による自己調整が認識操作をも上書きするほどの精度に達した時、彼はガラス越しの「両親」の目に、ひとかけらも愛が存在していないことを──自身がただの実験動物でしかないという事実を悟った。
　自身の愚かさとみじめさに嘆きながら、イマヌエル少年はいつか自分が用済みになることを理解し、極めて計画的に研究所からの脱出を図った。

　人の心を嗅ぎ取ることで追手を撒きながら、危険の臭いの薄い場所を探し、辿り着いたのはちいさな孤児院。
　転がり込んだその場所は当時でもわずかに存在した能力者の保護施設であり、この場所で「誇り高くあること」を教えられた。依存を核としていた傲慢さは、恩人によって強烈な自負心へと昇華された。
　自らの足で研究所に戻って後、自分を生み出した研究所から独立。
　正規の手段を踏んで両親に三行半を突きつけ、両親によって与えられた「イマヌエル・ノイマン」と決別し、「アダマス」と名乗るようになった。
「｜adamas《征服されざるもの》」──二度と誰かに生きる理由を求めないという誓いをこめて。

HO①：Rover
　シナリオロイス：『フリッツ・ヘーガー』 推奨感情:○P庇護/N猜疑心
　カヴァー/ワークス:自由/UGNエージェント関連
【指定】アダマスさん

　あなたはドイツ・ベルリン支部に勤務するエージェントだ。Rラボ所属エージェントと、私邸の孤児院の経営者の二足の草鞋を履くあなたは、UGN内の派閥闘争を遠巻きに見ながらオーヴァードとしての日常を取り戻していた。

　あなたの次のクライアントはR案件に巻き込まれた少年、フリッツ・ヘーガーだ。
　彼は覚醒したオーヴァードであると同時に、エージェントたちが次々と意識を混濁させていくという怪事件の参考人でもあった。
　あなたは彼のメンタルケアと養育を兼ねながら、事件の捜査の補佐を任されることとなった。

　あなたにとっては手慣れた、ごく平凡な事件となる筈だった。