気づけば下層の片隅でぼろ布に包まれていた。
それ以前の記憶はなく、自身の出自を知る手立ても何もない。
指先に痛みが走り、顔を上げれば鼠がいた。
そこで自身の指先が黒ずんでいることに気づく。
突如、鼠が仰向けになって苦しみだす。
やがて走り出した鼠を追うと、やがて三角の尖った屋根の鐘を見上げた。
見下ろせば鼠はこと切れていた。

教会にくる以前の記憶は曖昧で、名前も家族も思い出せない。
＿＿しかし何かに、いや＿＿自らの力に導かれ、名前と家族がもたらされた。
ショロトルという名前はレセンティア教会に来てからの呼び名。
記憶が無くてなお我儘に育ったのは、あるいは記憶を失う前は誰か頼れる存在が傍にいたのかもしれない。

基本的に丁寧な言葉を使い人と接するが、軽口を叩くときは崩れる。
おちゃらけることも少なくなく、割とてきとーな性格をしており、孤児院ではズルをするような遊び方をこっそり皆に教えている。
どうも性格が合わないのか、同メンバーとのミシェルとは衝突が多い。
反面、何故かタイミングは抜群に合い、いがみ合うはずがコンビプレーを評価されるに至っている。
ショロトル自身は知らないが、ミシェルの知った顔に似ているらしい。
また、態度に現さずとも上層(ウィネルス)との不平等を面白く思っていない。
下層(ヴィクトス)にも遊びをもたらそうだとか、大層なことは考えていないが、娯楽に寄った物を私情で盗み出してばらまくこともしばしば。
身体的特徴として、指先が黒く、怪盗団をする時以外は手袋をしている。
これは悪魔の力を宿したことから変色したものであり、その影響か指紋が存在しない。
おちゃらけて妙な格好をするのが好きなので服を集めている。
頭は悪くなく、修道女としての勉強も行っているが、素行は回復しないままでいる。
苦手な食べ物は製法を知ったためウィンナー。
好きな食べ物はブドウ。種がないと尚良い。

悪魔(サプレス)は気づけば傍にいた、当たり前の存在にして
何もない自分が唯一持っていたもの。
何もなかった自分に唯一何かをもたらしてくれた存在である。

それがもたらすならば、わが身の破滅もあるいは幸福に思えるかもしれない。
ただそれがもたらすのが、教会や怪盗団の破滅であるのなら、あるいは留めようとするだろう。
きっとその時になって、気づく。
いつもいがみ合うあいつも含めて、意外と『自分は彼らのことが好き』だと。
それくらいのひねくれもの。

正体

ミシェルの妹ではない。同じ歳で容姿が似ていて記憶がないだけの別人だった。
元になった人間はミシェル兄妹と同じ孤児院にいた人物。
ミシェルの覚醒の折、ミシェルの妹(アンジェリカ)から分かれたサプレス(ベクター)が感染り、妹の性質を宿す。
それにより、アンジェリカへ似た容姿になった。
もはやショロトルはアンジェリカとも元になった人物とも違う人間となっている。

3話における二次覚醒により、自分の正体に気づくとともにベクターを完全に自分のものにする。
また二次覚醒により妹の記憶の一部も宿すことになる。
それはアンジェリカの記憶からミシェルへの「与えられるばかりだった」という不満だった。
だからショロトルはミシェルへ何かを「与えよう」とする。
動機は彼女ら兄妹がいなければ、自身が今ここにないという感謝に似た気持ちから。
しかし本人はひねくれものなので理解していない。

名前：Vector(ベクター)
概要：パイプのような口吻を持つ人型。動物と機械を足したような手足の長い歪な姿をしている。
　　　口を動かさずに冷たい女性の声で敬語を話す。話したことはないがショロトル自身にはそうわかる。　
能力：『媒介させる能力』
　　　蚊や鼠らしき小さなものを無数に飛ばし、敵に味方の力による破壊を媒介させることができる
衝動：殺戮。やがて生かす殺すをも