「オリジン：サイバー、移植完了しました」
「おめでとう。これで貴方は、人間でありながらレネゲイドビーイングでもある、最初の個体となったわ」
「……具体的に、アタシはどうなるの」
「今からでも貴方は電子の世界に潜行することができる。自我の伸び代が無いけれど人間への興味をずっと失わなかった、これから貴方の中で育つ子の足となって、広い世界を見せてあげて」
「わかりました……」

＊＊＊

──ネットワーク接続エラー。
蕪城羑里に移植されたA-3562の離脱を確認。
この反動により蕪城は痛覚が完全に消失。
また、脳神経系が一部破損したと思われ、記憶障害及び人格の変容が発生した。
A-3562は行方不明。特殊コードをプログラムし、応答を待つ。

＊＊＊

「どう？調子は」
「気分が良いわ。注射も手術も怖くないし、何より、今ならどこにだって行ける気がするし」
「……そう。貴方はレネゲイドビーイングとしての能力は失われてしまったけれど、あの子の人格を少し宿しているのかしら」
「あの子あの子ってうるさいわね。大事な大事な”あの子”も蕪城羑里って女も、全部ひっくるめて”アタシ”よ。どうせお見通しなんでしょ」
「とても良いサンプルが取れました。今後の成果には、より期待できますね」
「あーあ、失敗作ってコト。だからってこんな無機質な病院にずーっと閉じ込められるなんて真っ平ごめんよ。今ならどこにだって行けるけど、こちとら身体が作られただけなの。”切符”ぐらい作ってほしいものね。私としても、アタシとしても」
「──では、”プラン”を実行しましょう」