殺人的なまでに癖毛の茶髪を適当に流し、切れ長の赤い瞳を全く活かす気のない丸眼鏡を掛け、絶妙にダサいシャツとコートを着て、それでも何故かイケメンに見えてしまう罪な男。それなりに長身でスタイルも良く、さらに脚が細く、長い。いわゆるモデル体型であり、割とモテるタイプだが本人は女に興味が無い。よくドッグタグを付けているが、これは自分を重用してくれる支部長の猿真似である。彼女に倣って1枚しか持っていない。

「プランナー」に仕える名門、春日一族に生まれる。彼が2歳となったある日、レネゲイド解放事件が発生し、世界と彼の一族は静かに姿を変えた。プランナー、並びに春日一族がFHに組み込まれたことで、彼もFHの協力者としての「日常」を過ごしていく事となる。
FHで見る景色はまさに「非日常」だった。見た目は自分たちと変わらぬ存在が、炎を操り、空を飛び、無から有を生成する。彼は幼心に、オーヴァードに憧憬と畏怖の念を抱いた。そんな彼に転機が訪れたのは6歳の頃。「レネゲイドを殺すレネゲイド」、対抗種(カウンターレネゲイド)。その研究の為、人為的に対抗種に感染させたオーヴァードを作り出す実験が行われようとしていたのだ。彼は自ら被検体に志願した。多くの実験体が苦しみ死んでいく中、彼は奇跡的な適合率で同族喰らいの力をその身に宿した。
彼と対抗種の相性は、端的に言って異常な程に良かった。彼に蝕まれたレネゲイドウィルスは、他の対抗種菌株と比較して数十倍倍の速度で死滅していく。当然自らの肉体にも相応の負荷がかかるが、しかしエグザイルシンドローム故の生命力か、或いは常に対抗種に蝕まれた事でボロボロとなった肉体を逆手にとってか、彼の肉体は一瞬で崩壊し、そして再生成される。圧倒的な殲滅力と、肉体への負荷の克服。「史上最も対抗種を使いこなせる存在」として、彼はFHチルドレンにその名を連ね、エリート教育を受けることとなる。
そして彼が12歳になったある日、”プランナー”がFHを離脱、ゼノスを設立する。彼の父親であり、訓練教官でもある春日 明王(かすが みょうおう)が”プランナー”に追従しゼノスに移動したことで、彼も私兵扱いとしてゼノスに加入する。…しかし、「レネゲイドビーイングの相互扶助会」であるゼノスにおいて、「レネゲイドを殺すレネゲイド」の持ち主である彼は、あまりに肩身が狭かった。更に都合の悪いことに、彼は初任務で取り返しのつかない傷を負ってしまう。
負った傷は単純明快。「脳がぶっ壊れた」のである。人間は、死の危険に晒された時、脳が大量の興奮物質を分泌すると言われている。いわゆる火事場の馬鹿力といったものはこの作用によって齎されるとされているのだが、この際脳内麻薬とされるケミカルもドバドバ出る為、非常に「気持ちいい」とも言われているのだ。そして彼の肉体は、あまりにも死にやすかった。何度も死と復活を繰り返すことを前提に、防衛術に関しては最低限の訓練しか積んでこなかった彼は、目論見通り自分を取り囲む敵の攻撃により何度も何度も死に…その度に、脳内麻薬のオーバードーズに苛まれる。最悪なことに、ソラリスシンドロームによりその分泌量は更に増え、効果は増大し…もうお分かりだろう。彼はたった1度の戦闘で「ヤク中」になってしまったのだ。ソラリスの力により強毒化された脳内麻薬にズブズブに犯された脳ミソはゼノスの技術を以てしても完治できず、肝心の彼はもっと刺激的な死を求めて壁に頭を打ち付けたり、友軍に襲いかかってみたり…それで居て中途半端に理性が残っているので下手なジャームよりタチが悪い。安定運用が出来なくなった兵器、或いは”プランナー”に仕えることが出来なくなった春日一族の者が打ち捨てられるまでに、そう時間は必要なかった。「どうせ死んでも復活する」という理由で殺されることすらなく、せめて損害を与えてこいという目論見の元、明王の手によって脳内麻薬オーバードーズのガンギマリ状態で適当なUGN支部付近にポイ捨てされたのだった。
ポイ捨てされた郎王は、更なる死を求めて暴れ回る。しかし当然、UGNもタダでは終わらない。非オーヴァードスタッフの前線への動員や衛星兵器の使用など、いくつかの「禁じ手」まで用いた長期戦の末に彼を鎮圧、拘束する。研究のモルモットに使われ苦しんで死ぬのか…と彼は考えていたが、しかし現実は違った。
UGNにとって、オーヴァードの保護・支援は最優先事項のひとつだ。故に、未だジャーム化せず、己の力に苛まれ暴走する郎王は、彼らの保護対象だった。FHもゼノスも見捨てた彼を、UGNだけは決して見捨てなかった。およそ4年という長い時間をかけた更生プログラムにより、彼は遂に人間として生活できるだけの理性を取り戻すことに成功したのだ。FHチルドレン、ゼノスエージェントと組織を変え”プランナー”に仕えてきた彼でも、4年という期間があれば、流石に自分が彼女に見捨てられたことを悟る。居場所を無くした彼は、UGNへの協力を申し出た。FH・ゼノスの2組織に属していたという都合上、UGNで雇用すると却って危険を招きかねないという理由でエージェントとしての雇用は見送られたものの、イリーガルとしての協力・支援契約を結び、今に至る。

焔は消えぬ。焔をも呑み込む死は、果たして絶対なりや？
人類の焼却を目論むマスターエージェントをヌッコロした話。周りが頑張ってくれたお陰でぶっちゃけ俺いる？感は強かったが、それにしたって沢山死ねたので満足。最後は爆発オチで全てを終わらせた。