容姿・経歴・その他メモ

履歴

　子供の頃どこかの店で見かけた『ソレ』を盗んだせいで俺の人生は変わった。『ソレ』は黒く塗られた木彫りの鳥だった。盗んだ理由は今となっては分からない。とても美しかったから、名家の堅苦しい生き方にうんざりしたから、もしかしたら理由なんてなかったかもしれないけれども俺は『ソレ』を盗んだ。
　『ソレ』を隠して家まで帰るとき激しい動悸と目眩に襲われ、当時は初めての犯罪にパニックになったと思っていたが今思えばそのとき覚醒したんだろう。
　その後はもう大変だった。盗んできた『ソレ』は動き出すし、何かを盗むことに抵抗はなくなるし、変な力を使えるようなったり散々だ。
　最近は人が大事に隠している「真実」を盗み出してそれを記事にしている。欲求も満たせるし金にもなるしちょうどいい。
　数年前友人の九 未知花を亡くした。彼女の死後自宅に向かうと彼女が開発していた人工知能が目に入りそれを盗んでしまった。今までいくつもの物を盗んできたのに心がざわつくのは久しぶりだ。
　彼女の死は一見"灰被りのノア"に巻き込まれた被害者のように見えたが彼女が最後に受けていた仕事がプラネットラダーのシステム構築と聞いて何か不穏な物を感じた。ラダー建築は金の動きなどに不透明なところがあり前々から目を付けていた。隠している「真実」があるのなら盗み出してならなきゃならない。九 未知花が残した人工知能も結構頼りになるし行くとするか。

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