弓弦の欲望“消滅”はかつてＵＧＮを追われるきっかけによる事件で最愛であった義兄弟、四綾マヒロを目の前に失った絶望の経験に起因する。

その事件により、何よりも守りたかった存在であるマヒロに庇われ、目の前で失ったことにより一度は死さえ考えた弓弦であったが、彼が自身に宛てた遺書に｢自分の分まで生きて欲しい｣｢生きて、自分のことを覚えていて欲しい｣という願いにより生きることを選ぶ。
彼の遺した願いを叶えることが、今弓弦にとっての生きている唯一であり絶対の理由となっている。

しかし、本当なら生きていたはずのマヒロの命で今も生き続けているといった弓弦の自罰的な感情は色濃く、消えることは無い。
｢生きなければ｣という使命感よりも、｢自分さえいなければ｣という自己否定の感情に時折揺らぐ事も。
そんな時、たまたま同じように自己否定的でこの世に一縷の希望も見いだせない自殺志願者の少年を彼の望みのままに殺したことにより、弓弦はその感情を御する術を見出す。

以降、『自殺掲示板の殺人鬼』として度々掲示板サイトやSNSから無作為抽出した自殺願望をもつ所謂『死にたがり』を殺すことで自身の”消滅願望”を満たすようになった。
自身と同じような人間を殺すことで欲望を僅かに満たすその行為は、擬似的自殺行為と言えるだろう。

居場所を求め彷徨う孤独なマーセナリー時から始めたそれは、『ファヴニール』という居場所を得た今でも度々繰り返されている。

弓弦の持つ愛銃『テンペスト』はアンチマテリアルライフルのような形状をしているが、その本体は銃に取り憑いた正体不明の実態を持たないハイイロオオカミだ。

『ファヴニールセル』の【宝物庫】に突如現れたソレは襲撃者により足に重症を負い、死の淵に立たされた弓弦に対し契約をもちかけた。
それは｢足を治しその命を助る代わりに、弓弦の『存在』の一部を貸与しろ｣というもの。
かつて何者かに『存在』や名前、記憶を奪われ、何者にも認識されなくなったオオカミは消えゆく運命を背負っていた。
そんなオオカミを唯一認識することの出来たのが弓弦であった。
弓弦はその契約を呑み、オオカミに『存在』と『テンペスト』という仮名を与え一命を取り留めた。

弓弦は本来、足部の神経に二度と歩けなくなるほどの重症をこの時負っている。
『テンペスト』がそばにある限り弓弦の足の機能を回復し、弓弦は『テンペスト』を使用することで他者に認知させ存在感を与える。
二人の関係は現在、一蓮托生となっている。