産まれた土地で有名な地主である、大清水家の三男として生まれる。兄の司･姉の由希がおり、家を継がせるならどちらかだと考えられていたため、当初は自由にのびのび育ってほしいと願われていた。

しかし、勉学や習い事といった教養･経験に関する事柄にあまり力を注がれなかったために、司や由希と比べてあまり出来がよくなかった。
父･幸成はそれでも良いと思っていたが、母･空はその事を不安に思い、半ば強行的に往人の矯正的教育に走ってしまう。

教育を間違ったという後悔と、名家の妻であり教育の要であるというプレッシャー、そして兄姉と比べて出来の悪い往人への苛立ちで、
元々ヒステリック気味だった性格に拍車が掛かる。罵倒や生活の娯楽･交友関係の制限は当たり前で、殴りつけたり所有物を壊したり、精神的･肉体的に虐待と言っていいほど、彼女の『教育』はエスカレートして行った。しかし、かつて(精神的余裕があったおかげで)優しかった空がいつか帰ってくると信じ、往人は耐えた。

ある日、空の愛用品であったティーカップを誤って割って落としてしまった往人。それにキレた空は、ティーカップの破片で往人の破片を切りつけてしまう。
痛み、悲しみ、そして信じていた母への失望を一気に経験した往人は、発狂寸前といった様子で、傷をそのままに家を出て行ってしまう。

数日後、街中で倒れているところを保護される往人。傷を放置してしまっていたために破傷風に罹ってしまい、傷の状態も悪くなってしまっていたため、一生残るものとなってしまった。
一方、往人の勝手な行動に怒り狂っていた空であったが、往人の状態と傷の詳細を聞き、やっと自分の過ちに気づく。
しかし時すでに遅し……往人にとって、空は最早母親ではなく、心と顔に一生物の傷を負わせた憎き他人と成り果てたのだった。

往人が自分を口汚く罵倒し、心を閉ざし、憎みさえしている様子を見て、自分は取り返しのつかないことをしたのだと絶望する空。自ら別居を幸成に申し入れ、幸成もそれに同意。
往人は、自分への加害を理由に、法の下で裁いてもらうことを希望したが、幸成が今後償いを代行することで希望を取り下げた。

それ以後、往人は完全にグレてしまい、大清水家の金で入った高校に通うことも少なく、着崩した制服で街をぶらついたり、不良と絡んだり喧嘩したり……といった堕落した毎日を送っている。
幸成は、空のこともあり強く出られない。(そして、もしこのまま育っても跡継ぎは司か由希がいるので、どうなってもいいとも思っている節もある)
そんな日々の中、往人はなんでもいいので、『自分にできること』がないか……と、宛もなく模索している。