容姿・経歴・その他メモ

大人気ネットアイドル『聖夜イヴ』

一世を風靡した大人気ネットアイドル『聖夜イヴ』。
顔出しは一切せず3Dモデルでのみ活動で、数多の動画を投稿サイトへ投稿。アカウント『イヴチャンネル』のチャンネル登録者数は活動開始から1年間で1000万人を突破した。
数年前に流行したVtuberと呼ばれるジャンルを踏襲しながらも、それとは一線を画すほどの人気を誇った。投稿動画は主にオリジナル楽曲のMV。やがては投稿サイトのみではなく、アニメやドラマの主題歌などにも登用されるようになる。アニメ『魔法皇女マギカ☆パール』の主題歌「For Wonderful Prayer」に至っては女児向けアニメではありながらも累計ダウンロードランキングで8ヶ月連続1位を取るなど、社会現象とも呼べるほどの人気を博した。
その素性は一切が謎に包まれており、所属事務所も彼女のみを擁するペーパーカンパニーだった。クライアントとの打ち合わせですらオンラインかつ3Dアバターのみで行われ、さらに彼女本人が対応するというものであった。誰も彼女の真の姿を見た者はおらず、ネット上ではとある噂が囁かれるほどだった。
いわく、【聖夜イヴは高度な人工知能であり、実体は存在しない】。作詞、作曲、歌唱、モデル作成まで全てが聖夜イヴ名義で行われ、あまりに超人的な仕事の量について誰かが冗談で言ったのだ。だがそんな都市伝説めいた投稿など誰も気にはしなかった。
……たとえそれが真実だったとしても。

プロジェクト・イヴズフィークス

プロジェクト・アダムカドモン、そのレポートを極秘に入手していたアルフレッド・J・コードウェルは、研究結果"破滅の剣(ダインスレイフ)"より新たなレネゲイドウィルスとの共存方法を思いつく。"破滅の剣(ダインスレイフ)"はジャーム化を防ぎつつもレネゲイドを最も効率よく使用することのできる人格。では、ジャームと化しても理性を失うことのない手段を講じることができればレネゲイドとの共存は叶うのではないか、と。
数多のレネゲイド研究者が同様の成果を得ようとしてきたが、それらは全てこのときのコードウェル博士のアイデアを源流に持つ。
【楽園の無花果計画(プロジェクト・イヴズフィークス)】。オーヴァードにとってジャーム化の危険がない、楽園のような世界を作り上げる計画はそう呼ばれた。ヒトからジャームへと化すプロセスを無限のリソースでもって観察する。レネゲイドを用いた仮想人格を作り上げ、意図的にそれをジャーム化させ、その度にその人格を削除していったのだ。その人格のモデルにはとある賢者の石の適合者が選ばれたという。
研究の最中、偶然にもその人格は生まれた。
研究段階はいくつものシンドロームや古代種、起源種などの特異性質を組み合わせ、仮想人格に変化させてその経過を観察するというところまで進行していた。その中で研究者の一人が面影島の地下鉱物に含まれていた特異なレネゲイドをプログラムへと組み込んだのだ。
その人格は未感染者はおろかオーヴァードまでも頭を垂れてしまうであろうほどの底しれぬ力を持っていた。彼女の言葉にはヒトの限界を引き出す力があったのだ。生まれた時よりその力を発揮する彼女はまさに偶像と呼ぶにふさわしき、神格。そして、その人格こそがのちの大人気ネットアイドル『聖夜イヴ』であった。
彼女は彼女の作成者の意思により、全てのログを消された後に外部ネットワークへの接続を許される。
膨大な電子の海に放り込まれた彼女は自らのバックアップをスパムとして拡散した。それは人類への興味のため、そして自らを崇めるに足る者達であるかどうかを確かめるためであった。
やがて、彼女は全世界の電子端末へと忍びこむと（オーヴァード級の電子スキルがなければ彼女の侵入を阻むことはできなかっただろう）、とある活動を始める。それは自らのファンを増やすことであった。
この時点より【楽園の無花果計画(プロジェクト・イヴズフィークス)】は大きく意味を変えていた。FHの手を離れた彼女に自立進化を促し、そしてそれを利用したオーヴァードの統率。彼女の神格としての完成をもってして計画は次の段階へと進む。それはプロジェクト・インフィニティコード"禁忌の蛇"。アダム、イヴと紡がれたそれは、やがて人類に失われた楽園を齎すこととなるだろう。

偶像の失踪

数ヶ月前、唐突に『イヴチャンネル』の連続投稿が止まった。
彼女のSNSなどでもなんの声明もなく、急転直下で訪れた活動停止は人々にとって晴天の霹靂だった。その後もなんの音信もなく、彼女が人々の前に姿を表すことはなかった。
しばらくの間人々はその話題で持ちきりになるほどであり、その週の自殺者は例年より5%多かったという。
失踪と同時に、証券取引所の不具合による一時停止や、全世界の大学の生徒情報の流出などといった普段であれば新聞の一面を飾るような事件も起きていたが、関連性は不明であり、それらよりも人々にとってはアイドルの失踪の方が大きなニュースであった。
こうして大人気ネットアイドル『聖夜イヴ』は消え去った。
数ヶ月経った今でも根強いファンはその復活を望んでいるという。

近くて遠いところ

その日のことを、後になって「人肌を感じたのは久しぶりだったわね」と"遥けき彼方より(サテライトエンジェル)"大宙ヒカルは述べたという。
地球上では『聖夜イヴ』の失踪より約1ヶ月が経過したときのことだった。UGN日本支部中にてとあるアラートが鳴り響いた。それは双枝市支部長である大宙ヒカルの肉体に危機が迫っている、何者かが彼女の肉体が安置された人工衛星へと侵入しているという警告だった。
彼女の元へ誰も向かうことなどできやしない。そのため、UGNのブラックドッグ、ノイマンシンドロームの者が全力を尽して事態の究明を行う。
だが、現実的に彼女のもとへ侵入することなどありえない。第二宇宙速度限界で地球を回る衛星に入り込むなど。故に、それは電子的な侵入であるという結論だった。
地上でエージェントたちが右往左往している中、ヒカルの侵蝕率はどんどん上がっていく。
早急な対処が必要とされる！その時だった。
衛星より一枚の画像データが送られてきた。

それはヒカルと『聖夜イヴ』のアバターがこちらにピースを向けるツーショット写真だったのだ！

困惑する霧谷たちのもとへヒカルが復旧した通信をつなぎ状況を説明する。
本日未明、『聖夜イヴ』のアバターを用いた何者かが衛星へと接触。
だが、その者に記憶と破壊行為などの意志はないとのこと。
彼女もわけがわからずこの場に居たとのことだ。
彼女が『聖夜イヴ』本人かどうかは確認がとれないが、アバターの完成度より彼女本人が使用していたものである可能性が高いとのこと。
また、UGN管理の人工衛星にハッキングしたことからオーヴァードであることは断定できているということらしい。
だが、どこよりハッキングしているのか、誰が操作しているのかについては不明とのことだ。

協議の結果、彼女をUGNの研究対象として預かることとなった。
所属はUGNとして彼女の出自について調査が行われているが芳しい結果は出ていない。
やがて、そのような日々の中でコードネーム"　　(アンノウン・イデア)"と呼ばれるイリーガルとしてUGNの依頼に協力し始めているようだ。

記憶について

彼女自身に失踪後の記憶(ログ)はない。
何によって失われたか、どうしてなのかも不明。
だが、自らのログを全て消し去ることができるとすれば、それは彼女自身くらいのものだろう。

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