宮廷楽団の制服である白装束を羽織っている。マーメイドのものは改造が施されており、臍が出ている。
　髪は金色で短くまとめている。目の色は青く、ハイライトはなし。かなり整った風貌だが海蛇(リヴァイアサン)を模したタトゥーを入れており、美しい相貌を、見るものを思わず竦ませるコワモテへと変えている。

　『宮廷楽団』、それはFHセル『タルタロス』の幹部エージェント『嫉妬の指揮者』の配下にある傭兵団であり、マーメイドはそこに所属していた少女だった。

　宮廷楽団に集められるのは、UGNに保護されることもなく、FHに注目されることもなかった『隙間』にいた子供のオーヴァード、特に文化や偏見などにより『迫害』を受けた子供たちであった。無論、マーメイドもその例に漏れていなかった。
　マーメイドはヨーロッパのどこかから攫われたのちに人身売買の末に中東にあるカルト教団『ヴァナラの牙』に買われ、教団に収められていた遺産『白猿の額冠』を被っても死ななかったことから『白猿の御子』として、『ヴァナラの牙』がタルタロスに殲滅させられるまでの10年間祀られていた。

　『ヴァナラの牙』が『タルタロス』によって壊滅させられた後は『嫉妬の指揮者』に見出され『宮廷楽団』に入団。ノイマンとオルクスによる優れた戦術指揮能力を十全に発揮し、一年で十席に到達。その時点で『嫉妬の指揮者』不在時の指揮権を委ねられる特別待遇を受けるまでになる。

　その後も経験を重ね七席に数えられるまでになったが、今(エレシウス当日)から半年前に『嫉妬の指揮者』と『宮廷楽団』がN市にて敗北。別の地域で作戦行動を取っていたマーメイド率いる別働隊はUGNと相対していなかったが、『嫉妬の指揮者』からの投降勧告によるN市支部に投降、したかのように思われたが…。
　その三ヶ月後、マーメイドをはじめとした宮廷楽団の傭兵数名がUGNの監視下から逃走。宮廷楽団を名乗り、『タルタロス』にも戻ることなく、完全なフリーの傭兵団として活動するようになった。

　マーメイドらの目的はどの組織にも完全に属さない形での『宮廷楽団』の再興、そして自らを捨て駒として扱い、遂には仇すら取らずに仇敵に与した『嫉妬の指揮者』の抹殺である。そのためにマーメイドらは新たなメンバーや資金集めのために傭兵活動に勤しんでいる。

　現在の宮廷楽団の主な仕事はUGNに在籍していた短い期間に築いたUGNのコネクションを利用した、UGNが表立って動かない裏方の仕事が主。マーメイドが恨みを持っているのはあくまで嫉妬の指揮者であり、UGNに対して深い憎悪があるわけではないのだ。
　とはいえUGNからの仕事はより大きな仕事につなげるための足掛かり程度に思っており、

一人称:オレ　口調:砕けた、棘のある口調。基本的に敬語は使わない

　たいへんな激情家。常に周りを煽るような態度、口調でいるが、煽りにも非常に弱く、すぐに乗せられてしまう。しかし、客観的に今の自分を見つめることのできる冷静さも併せ持っており、余程なことがない限りはヒートアップしてすぐに自らを落ち着かせることができる。

　仲間意識が非常に強く、宮廷楽団の面子はもちろんのこと、仕事で一緒になっただけの相手でも無意識のうちに共に生き残る方法を考えるなど傭兵にしては甘い面もある。
　またその出自から子供にも甘い。

　情緒が激しく、刹那的に生きているように見える彼女だがその根底には深い諦めの感情が横たわっている。教団の幹部たちに嬲られ、そこから救い出してくれた嫉妬の指揮者には眼中にも入れられず、自分のやることなすこと無駄なのではないか、自分が存在する意味もないのではないか、と考えてしまう。
　しかし。
　それでも彼女は走り続ける。彼女を想う仲間がいるから、彼女を支える友がいるから。たとえ自分に何も期待できなくとも、大切なもののために足掻き続ける。
　周りに対する攻撃的な姿勢は、諦めを必死で見て見ぬ振りをしようとする彼女なりの強がりなのだ。

《アリオンとの関係》
　アリオンと出会ったのは中東の市場。十席の昇格祝いに『嫉妬の指揮者』に買ってもらった黒曜石がはまったネックレスがたまたまアリオンだったという、完全なる偶然の出会いだった。

　宮廷楽団において、仲間達を指揮する立場にあり、また嫉妬の指揮者の管理下にいる中においては対等な友人というものが少なかったマーメイドにとってアリオンは数少ない対等な友人であり、よく悩みを相談したり、暇な時に雑談をするなどしていた。また白猿の額冠に理性的な振る舞いを強要されているマーメイドだが、激情家であるマーメイドはヒートアップしやすいため、アリオンによって宥められることも多く、アリオンのたしなめで成功した作戦も少なくない。

　UGNに絆された『嫉妬の指揮者』を見た時、怒りと絶望で放心していたマーメイドを立ち直らせたのもアリオンの助言だった。

《ヴァシリアスとの因縁》
　中東において活動していたヴァシリアスと『タルタロス』は時たま衝突を起こしており、その際には『宮廷楽団』が駆り出されることも多くあった。
　こういった戦闘の中で宮廷楽団のメンバーも数名が戦死している。その中にいる『踊子のメロウ』は宮廷楽団に入りたてのマーメイドによくしてくれた先輩であったが、マーメイドらを逃すためにヴァシリアスと直接対峙し、討ち取られてしまった。
　理知的な振る舞いを遺産に強制されているマーメイドは決してその恨みを表に出すことはないが、今も憎悪はその心のうちに宿っている。
　『エレウシスの秘儀』においてヴァシリアス討伐の依頼を引き受けたのは、かつて傭兵として名を馳せたヴァシリアスを倒すことで新生宮廷楽団の名を挙げることや高い報奨金などもあるが、かつて『宮廷楽団』のメンバーを殺したヴァシリアスへの復讐という面も大きい。

-ヴァシリアスに殺害された宮廷楽団(席番は当時のもの)-
第二席　海峡のネプチューン
第九席　踊子のメロウ
第十一席　巨壁のタニファ
第十六席　乱波のカッパ
第二十三席　欺瞞のセルキー
第二十四席　夢幻のニクセ
第三十席　綿毛のモハモハ
第三十一席　漆黒のラートシカムイ
第三十四席　覗見のパニア

-N市で戦死した宮廷楽団メンバー-
第三席　深淵のクラーケン
第四席　死毒のヒュドラ
第六席　絶望のマカラ
第十席　鉄火のインカニヤンバ
第十二席　猟犬のルサールカ
第十三席　潮騒のセイレーン
第十六席　先陣のオーキュペテー
第十八席　剛力のネッシー
第十九席　人喰のミズチ
第二十一席　殺戮のケートス
第二十三席　極寒のニンゲン
第二十六席　朧月のシン
第二十九席　鉄壁のザラタン
第三十二席　沼地のウォーターリーパー
第四十一席　車輪のフーア
番外　宣教のインスマス

-マーメイド率いる宮廷楽団メンバー-
旧メンバー
第三席　雷雲のノッケン
第四席　電脳のストーウェオーユーエ
第六席　汚染のブロブスター
第八席　致命のカルキノス
第十席　機甲のヴォジャノーイ
第十一席　花火のカリュブディス
第十二席　狩人のケルピー
第十三席　霊水のウンディーネ

新メンバー
第二席　母胎のアナーヒター
第五席　鋼鉄のシュイフー
第七席　狂信のアヅミ
第九席　皮剥のタニグク
雑記
・『嫉妬の指揮者』が実際には女であること知っている数少ない人間の1人。

・顔に海蛇のタトゥーを入れているのは嫉妬の指揮者への尊敬もあるが、一番は自分の出自への反抗。今まで見た目だけを求められていたが、宮廷楽団に入ってからはマーメイド自身の技能が求められるようになったことで、己が鍛え上げた力で生きていたいという祈りからタトゥーを入れた。男性的な口調もそのため。タトゥーを入れたのは今は亡き『踊子のメロウ』