M市のとある高校に通う高校生。
諸事情あり、とあるオーヴァードの女性と共に暮らしている。
お淑やかでもの静かだが、少し世間知らずで抜けている面がある。
勉強はできる方で常に成績は上位。友人の宿題を手伝うのが専らの趣味らしい。

元は名のある資産家のもとに生まれた一人娘である。
幼少のころから裕福な暮らしをしており、なに不自由なく育てられた。
そんな彼女には特異な体質が備わっている。
超常的運、それが彼女にもたらされたギフトだった。
運が絡む勝負ではまず負けることは無く、どんな細かいことであろうと彼女の都合がいい方へと流れる。
私は奇跡の子だと、信じて疑わなかった。

そんなある日、両親と彼女の乗る飛行機がFHによるテロのターゲットとなってしまう。
彼女の思考は何故？という疑問で埋め尽くされる。
運とは一方向ではない。
いい方向へ振り切ることもあれば、悪い方向へと振り切れることもある。
このテロは、彼女の体質が引き寄せてしまったものだった。
FHの構成員たちは飛行機をジャックした後、それを無理矢理墜落させ、死の間際オーヴァードへと覚醒するものが現れることを期待していた。

バラバラになり燃え盛る飛行機の中、目を覚ます。
それはある意味奇跡だっただろう。
座席の一部とともに割れた飛行機から地面へと投げ出されていた彼女は、中にいた乗客たちとは違い飛行機に焼かれずに済んだらしい。
彼女の周りを蝶が舞う。
まるで生き延びた奇跡を祝福するように、FHの思惑通りオーヴァードとなってしまった彼女を。
彼女は生まれて初めて奇跡を呪った。
何故両親とともに死なせてくれなかったのか、何故自分だけを生かしたのかと。
焼け死んでいる両親を見ながら。
蝶はなにも答えてはくれなかった。

その後、一時はUGNの保護を受けUGNチルドレンとなったが、UGNの保護施設を脱走。
紆余曲折あってオーヴァードの女性に拾われ共に生活することとなった。

彼女は、友人たちの言う『美しいもの』とはなにかを見定めようとしている。
与えられた物を享受するだけだった今までを捨てて。
それを自らの手で見つけ出すことが、次なる一歩になると信じているからだ。